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霊群の杜
以津真天
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やめなよ!地面に置いたやつだよ!?あそこたまに猫がトイレにしてるよ!?」
岩戸から身を乗り出した奉を、縁ちゃんが押しとどめた。…こいつに関わる女は苦労が絶えないな。
甘いもの買ってきます…と石段を静々と降りていくきじとらさんを追いかけるように、縁ちゃんも『ツタヤ行ってくる』みたいなしょうもない理由で帰って行った。…もう少し、ゆっくりしていけばいいのに。



「…急激に女っ気が消えたな」
「黙れ裏切者。お前は今日いっぱい、俺の敵だ」
きじとらさんの包みを解きながら、相変わらずの仏頂面で呟く。俺はきじとらさんが淹れていってくれたお茶を啜る。
「お前な…俺が供物で交渉しなかったらもっと長引いてたんだぞ。俺はお前の為に何度、人外に土下座させられるんだ」
「……新米だねぇ……」
おむすびを口いっぱいに頬張る奉の表情が、少し緩んだ。腹いっぱいになったら怒りが落ち着いたのか。子供か。
「第一、どうして『彼』が結界の外に出て来ている。出さないための契約じゃないのかよ」
「俺が出した」
「は??」
熱い茶を啜り、奉は小さく息をついた。
「お前だろうが『供物をしたい』と云ったのは」
「直に渡したいって意味じゃねぇよ!?お歳暮じゃねぇんだから!!」
「結界の中に供物は届かない」
―――俺も興味が湧いたんだよねぇ、千年狂わなかった人間の魂に…と恐ろしい事を呟きながら、奉は沢庵を噛んだ。
「幸い、祀りたいと云う知り合いもいるしねぇ。面倒な後処理はそいつに任せて、と」
「あぁ殴りたいなぁこいつ」
声に出た。
「その興味が先立って、ついうっかり忘れてたんだよねぇ、どうしてこいつらが閉じ込められていたのかを」
「なんでそれを忘れるの!?お前なんのためにここにいるの!?」
「祀るとなると、ご本尊がいるねぇ。そう思った矢先、偶然この春手に入れた石像っぽいものが暇そうに横たわっていた」
視線の先に、今年の春先に境内に大量放置されていた遮光式土器が打ち捨てられていた。
「結界の中からあいつを引っこ抜いて、ひとまずコレに宿らせたわけだ」


―――それだよ。


「すると何か、お前はあの武士を遮光式土器に宿らせてそれを俺に拝ませようとしていたのか」
「そしたらもう、怒る怒る。土器も割れんばかりにねぇ」
怒るわそれは。千年の怒りも再燃するわ。いらんことばっかりしやがって、こいつ死んだらいいのに。
「そして通りすがりの鴫崎に飛びかかり、躰を乗っ取り、南条を亡ぼすとか叫びながら岩戸をこじ開けるあの状況に至る」
「徹頭徹尾お前のマッチポンプじゃねぇか」
彼がずっと口にしていた南条…というのは思った通り、玉群が『玉群』を名乗る前の苗字だったらしい。
「……で、鴫崎はこの後どうなる?」
「……ご本尊ってことになるねぇ。普段の生活に
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