以津真天
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
っていくのだな。
「私も、入れなくて困っています。奉様、お腹を空かせているのに」
腹が減っている状態で、この状況を2時間!?なにこれ天罰!?
暇人の奉は腹でも何でも減らせばよいが、鴫崎は2時間も配達をほったらかしにしていることになる。子供も生まれるし、これから物入りだというのにだ。なんか事情がよく分からないが、俺は鴫崎の真横に回った。
「なぁ、いいのか?配達途中だろ」
「おぉ!?そなたは!?」
―――誰、こいつ?
咄嗟にそんな疑問が脳裏をよぎった。小さい頃から見慣れている鴫崎の顔のはずだった。しかしこれは。
「鴫崎じゃ、ない…」
そんな筈はない。髪型も制服もホクロの位置も、全て鴫崎のものだというのに、鴫崎の生皮を被った誰か他の人物のような…いや、そんな筈はないのに。
「外にいるのは結貴だな。気をつけろ、そいつは」
「彼の地では…大変世話になった!」
鴫崎…らしき男は、ざっと体を引くと突然膝を折り、深々と土下座を始めた。
「…配達員さん!?」
縁ちゃんは鴫崎から一定の距離を保ちながら俺の背後に回り込んだ。どうやら俺には無害な人間と見做したようだ。…女の子のこういうざっくりした状況把握力は、目を見張るものがある。
「彼の地って?」
本当に何も状況が見えてこないが、とりあえず話を合わせてみる。
「お忘れとは何と奥ゆかしい…普段よりさぞかし徳の高いお方なのでしょうなぁ」
うわこいつ絶対鴫崎じゃない!鴫崎が知るはずのない単語がちょいちょい会話に出てくる!!
「彼の戦場にて、供物を頂戴した!!」
「戦場……」
―――貴様は、どちらだ。
そうだ、この声は。
俺はこの男に、戦場ヶ火の群れ飛ぶ平原で飴を渡した。
何も照らさない無数の光と『玉群』の灯りの中で。
「応、申し遅れ相済まぬ。…我が名は島津清正。南条に仇為す者なり!!」
そう叫んで島津と名乗る鴫崎は、開かない岩戸を振り返り、睨み付けた。
「あ…どうも、ご丁寧に。青島結貴と申します」
10年来の悪友に自己紹介。なんだこの状況は。
「青島殿…何とも清々しき御名である。しばし待たれよ、ここな南条の末裔をば引きずり出して」
「あの…さっきから云う南条とは」
「このっ…岩戸に籠って出てこない卑怯者よ!!」
そう云って島津は岩戸にとって返し、再び引っ張り始めた。やめろよ〜、もうこいつ嫌だよ〜…と、奉がとうとう弱音っぽいものを吐き始めた。限界近いらしい。…このまま奉が絞め殺されたりしたら、かなりの確率で縁ちゃんの子供が『奉』にされるし、鴫崎は幼子を残して縄を打たれてしまう。…いやいや、その前にきじとらさんがそっと匕首を抜いて構えた!
「―――今日も、供物をお持ちしました」
非常にまずい。このままではお縄どころか鴫崎が幼
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ