第01部「始動」
第01話
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るよ」
「じゃあどうするのよ」
「どうしようかねぇ…ぶっちゃけテンカワ君が死んでくれるのが一番なんだけどね」
再度乾いた音が広がる。
誰かが誰かの頬を叩いた音だ。
「…痛いよ」
「冗談でもそんな事言わないで」
「まんざら冗談って訳でもないんだけどねぇ」
「ちょっと!?」
「落ち着きなよ。つまり……」
静かな部屋に男の声が響く。それは新たな騒動の種になる。しかし、女はその言葉に唇を緩めた。
--
「スゥ〜スゥ……」
「相変わらず寝付きが良いな」
ラピスの部屋はアキトの部屋の隣に位置する。
ラピスはアキトに依存し過ぎている。本当の意味で他人を感じた事もあるが、リンクで繋がった事が決定的だった。
リンクの同調率を上げれば、思考の共有すらも行える。そうでなくとも、単純な感情の起伏くらいなら意識せずとも伝わってくる。
他者に対し恐怖と空虚が渦巻いていたラピスにとって、アキトの……プリンスオブダークネスの狂気…以前の他人を思いやる心が、少なくなっていたラピスの感情を刺激した。
アキトの目となり、アキトの耳となり、アキトの手に、アキトの足に、アキトの…アキトの…アキトの。
いつの間にか口癖になっていた言葉。まるで、自分に言い聞かせているような呪文-呪い-。ラピスにとって至福の瞬間…アキトの為にアキトと繋がっている。必要とされている事の再認識。それが少女の存在意義と言わんばかりに。
今でこそ落ち着いているが、アキトの説得や時間が徐々にラピスの依存症を抑え、部屋を分け一人で就寝出来るようになった。
アキトを掴んで放ないラピスに、彼は諦め気味にソファーに座る。
ユーチャリスに乗り込み、今と同じ状況で床に腰を降ろして寝るアキトに業を煮やしたラムダが製作させた物だ。
「…俺は。どうしたら良い…………」
瞳を閉じ、膝に乗せたラピスの頭を撫でる。
「…アキ、ト……ゥ」
--
ラピスは夢を見ていた。
アキトが微笑み、隣に自分が立っている。幸せだ。これが何かは分からないが、自分が幸せだと言うことをハッキリとは分かって無いが、自覚はしているかも知れない。
アキトの笑みが消える。いつの間にか、隣にいたアキトが消えた。
「……ス」
振り返る。
「 」
アキトが居た。見ると同時に駆け出す。
距離が縮まらない。近づいた分だけ離れていく。
苦しい。苦しい苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。
「アキト…アキト!」
アキトの名を呼ぶが届かない。アキトの顔が見えた。表情が、見えた。唇が動いた。
アレは何?聞こえない。アキトの声が…アキトが感じられない。
苦しい。苦しい苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい苦しい。苦しい。苦し
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