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Blue Rose
第三十九話 認識その十二

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「そうはされません」
「逃げたかったですが」
 優花の現実からだ。
「ずっとそう思っていました」
「ですが逃げませんでしたね」
 院長は優子の現実を指摘した。
「そうでしたね」
「逃げようと思ってもですか」
「逃げなかったことは事実です」
 紛れもなく、というのだ。
「誰でもそう思う事柄が一生にあります」
「そこで逃げるか逃げないかは」
「当然逃げた方がいい場合もあります」
 例えばどうしようもないまでに暴力を振るう相手からだ、DVを行う家族や暴力教師に耐えていいことなぞ何もない、深刻なトラウマを抱えるか最悪潰れて自殺するかだ。こうした輩からは逃げて難を逃れるに限る。若しくは司法に訴えるかだ。
「ですが先生の場合はです」
「逃げてはいけなかったですね」
「そして逃げなかったです」
 優花と共にいることを選んだというのだ。
「逃げてはいけない場合でも逃げなかった」
「このことは大きいと」
「そうです、逃げてはいけなかったので」
「そうなのですね」
「人は迷うものです」
 こうもだ、院長は優子に言った。
「迷いそして決断を下す」
「その決断が重要なのですね」
「そして正しい決断を下されました」 
 微笑んで優子に話した。
「非常に大きかったです」
「そうですか」
「はい、よく選ばれました」
「だといいのですが」
「そしてそれが妹さんにとって大きな助けになりました」
「あの娘の」
「妹さんは先生を最も頼りにされていますね」
 優子を見ての言葉だ。
「親友の方もそうだとのことですが」
「はい、そうです」
「若し先生と親友の方に逃げられていたら」
「あの娘はどうしていいかわからなかった」
「潰れていたでしょう」
 自分に突き付けられた現実、男から女になるそれにというのだ。
「一人で乗り切るにはあまりにも厳しいことなので」
「だからですね」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「先生と親友の方のご決断は立派でした」
「そうだったのですね」
「そうです、迷うことは当然です」
 それは仕方がないというのだ、だが重要なのは。
「決断が大事なのです」
「その決断で、ですか」
「人は決まります、そして」
「私もですね」
「親友の方もです」
 龍馬もというのだ。
「それで決まりました」
「若し逃げていれば」
「それは非常に残念なことでした」
「あの娘にとって」
「貴女にとってもです」
 当然龍馬にとってもというのだ。
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