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真田十勇士
巻ノ七十四 最後の花見その十三

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 家康もそうなるという、だがだった。
「周公旦は野心はなかったな」
「はい、まさに理想の摂政でした」
「しかし内府殿にはな」
「やはり」
「それがおありというかじゃ」
「これまで眠っていましたな」
 幸村は家康の野心についてこう述べた。
「いえ、当初はお持ちではなかったしょう」
「岡崎や浜松におられた頃はな」
「そして駿府におられた頃は」
「まだな、しかし力をつけられてな」
「天下に揺るぎない力を持たれてから」
「そうした野心を持たれた」
 家康はそうなっていったというのだ、力を持つにつれて。
「天下を狙える様になってな」
「そうですな、しかし」
「関東に転封となり関白様が跡継ぎに定められてな」
「もう天下は狙えぬと思われ」
「諦めておられた、しかし関白様がおられなくなった」
 他ならぬ秀吉に腹を切らされてだ、家康も秀長を助けようとしたがそれは適わなかった。幸村にしても無念のことだった。
「それでじゃ」
「これはと思われ」
「野心が目を覚まされたのじゃ」
「そうなりますか」
「太閤様がおられなくなれば」
 まさにその時はというのだ。
「内府殿は動かれるぞ」
「そうなりますか」
「間違いなくな」
「では治部殿は」
 石田の名をだ、幸村は話した。
「あの方も」
「鋭い御仁じゃ」
 昌幸から見てもだ、石田はそうだった。
「非常にな」
「だからこそ」
「もう内府殿のこともじゃ」
「お察しですか」
「だから太閤様が亡くなられればな」
「すぐに豊臣家の天下をお護りする為に」
「動かれる」
 石田はというのだ。
「五奉行筆頭としてというよりはな」
「治部殿ご自身として」
「そうじゃ」
「それはどうも」
「あの御仁は非常に切れる方、しかしな」
「平壊者ですな」
「まさにそれじゃ、あれだけの平壊者はじゃ」
 昌幸はこのことは残念そうに述べた。
「そうはおられぬ」
「ご自身が正しいと思われれば」
「止まらずしかも時も場所もな」
「選ばれませぬな」
「それが厄介なのじゃ」
「非常に頭が切れて勇気と忠義もお持ちですが」
 石田の忠義は絶対だ、だから秀吉も彼に絶対の信頼を置いて彼が何を言おうとも罰することもしていないのだ。
「しかしですな」
「相手が誰でもずけずけと言うしな」
「それが近頃どうもです」
「豊臣家の家中でもいざかいになっておるな」
「加藤殿達が」
 七将を中心とした武断派とされる者達がというのだ。
「お嫌いになってです」
「家中に亀裂が出来ておるな」
「どうにも」
「あの御仁は決して悪い方ではないが」
「それでもですな」
「あのご気質は好き嫌いが分かれる」
 それもはっきりと、というのだ。
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