来、来 〜小さいおじさんシリーズ16
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終わらぬかの間に、端正の顔色が紙のように白くなった。
「まずい、またあの時のように聞かされるぞ、ヒップでホップなライムのビートを」
豪勢は少しワクワクしている。端正は刀の柄に震える手をかけ、気がふれたように血走った目を上げた。
「こっ…これ以上、呉の恥を卿らに晒すくらいなら…卿らもろとも…」
「お、おい待て、たかが歌くらいで何をそこまで追い詰められているんだ貴様は!」
「卿に何が分かる!!徹底的に音楽性が合わんのだ、あの音楽が呉で大ブームだと思うだけで気っ…気が狂いそうだ!!」
え…?そんな理由で!?
おっさん3人の無理心中とか見たくないのでしぶしぶ腰を上げた瞬間、彼らが乗っていた畳が一枚、ぶわりと持ち上がった。
「む!?」
「月英…今です!!」
白頭巾の声に呼応するようなタイミングで、畳の下から一陣の竜巻が巻き上がり、鈴の音が千々に乱れた。そして…再び畳が元に戻った時には鈴の音は消え去り、つむじ風だけが跡形を残すのみであった。
「終わった…のか?」
端正の口元から、魂が抜けていくようなため息が漏れた。その掌がだらりと垂れ下がったのを見極め、豪勢はいぐさのマットに腰をおろした。
「ったく…あの戦乱の時代を生き抜いたというのに、こんな下らん理由で斬られてたまるか」
端正も、荒い息で肩を上下させつつも刀を鞘に納め、倒れ込むように座った。
「………おい、奥方への褒美に『孔明のおヨメさん』2巻を買って差し上げろ」
言葉が終わるや否や、3人の体が飛び上がるレベルの床ドンを下から食らい、彼らは再びすくみあがった。
「馬鹿めが、不用意な事を抜かすな。まだテンパっているのか?」
豪勢が端正を小声で嗜める。…何だろう、甘寧は結局もう出てこないのだろうか。
「うむ…俺は暫く、畳が持ち上がる度に『予兆』に震えそうだ」
「な。豪傑とはその登場も、気迫に満ちかつキャッチーなものだのぅ。我々、軍師がオーラの空気のと騒いでも、豪傑の放つ溢れんばかりの暴力のオーラに晒されたら…足元にも及ばん」
「相変わらず、彼女には何を云ってもいいと思ってますね、貴方がたは」
彼らは何事もなかったように茶をすすり始めたが、俺は甘寧がどうなったのか気になって仕方がない。
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