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俺の四畳半が最近安らげない件
来、来 〜小さいおじさんシリーズ16
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スの食い過ぎで体冷えてやがる。



温かい茶をすすり、ほうと小さく息をついた端正が呟いた。
「―――ま、我々は所詮軍師。鈴だの武器だので悪目立ちする必要はないのだ」


……お前いま綺羅星の如き武将達の戦働きを『悪目立ち』っつったか。


「そうですかね。私には常に、貴方が現れる『予兆』を感じられましたが」
そう云って白頭巾が、羽扇を口元にあてた。
「なに!?」
まんざらでもないような顔をして、端正が身を乗り出した。
「そ、そうか…分かる者には分かるのだな、俺の放つ高貴な覇気が」
お前も何云ってんだ。何処ぞの海賊漫画か。
「貴方が近づくと我が軍の楽師連中が『奴が来るぞー!!』『半音外すと聞き咎めて突っ込まれるぞー!!』と楽器を抱えて逃げ惑ったものですよ…くっくっく」
「おい待て」
「わはははは工兵連中は『無茶な納期で膨大な数の矢を作らされるー!!』てな」
豪勢が茶を吹いて笑った。
「楽師と工兵がそわそわし始めると『あ、来たな』と」
「ぐぬぬ」

端正、まさかのブラック上司疑惑。

言葉に詰まった端正をちらりと流し見て、白頭巾がドヤ顔をちらつかせ始めた。
「予兆を語るなど愚かしい。…優れた軍師とは戦場の『空気』を支配する者。貴方がたも感じた筈ですよ、私が戦場に現れた瞬間に一変する空気の流れを」


―――前々から思っていたが、何でこいつこんなに自信満々なんだろう。歴史的な敗軍の将のくせに。


豪勢と端正は死んだ魚のような目で白頭巾を一瞥した。
「…兵の動きに陰険さが加わる」
「…勝敗、というより嫌がらせメインの動きをしだすよな」
「…東南から生臭い風が吹く」
「…疫病が流行る」
「…苛々してくる」
「…ドヤ顔に腹立つ」
「…人としてどうなのかと思う」
「…酒が不味くなる」
「…水すら、不味くなる」
「はははは後半只の悪口ですな」
ほら見ろ、要らんこと云うから。想像以上の嫌われっぷりだったが。
「他にもあるな、こ奴が進軍した跡地には蕪がわっさわっさ生えている」
「だはははは戦場あるあるだな!」
「行軍の跡にはぺんぺん草一本残らない盗賊軍団の親玉が…何をおっしゃるやら」

…どっちも『後に残すもの』であって『予兆』じゃないけどな…



―――しゃりん。



三人の動きが止まった。
しゃりん、しゃりん、しゃりん…と四畳半を満たす鈴の音。鋭敏な端正の耳は、いち早く音の正体を突き止めたらしく、茶器を蹴倒すようにして立ち上がった。
「………甘寧!!」
「そういやエンカウントしたことなかったな、こっち来てから」
「というより、問題はですね」


―――YO,YO


「エンカウントして大丈夫な状態なのか…と」
白頭巾の言葉が終わるか
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