百十二 驚天動地
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であった。
八岐大蛇など目ではない、複数の頭を持つ龍のようなソレが、紫苑の許へ向かおうとするナルトの眼前に立ちはだかる。一匹の巨大な龍が口を開けてナルトに襲い掛かった。
「邪魔だ」
パァンッ、と龍の頭が弾け飛ぶ。
何もしてないはずなのに、ナルトがそう一言口にしただけで、漆黒の龍の一体が胴体から真っ二つに引き裂かれた。
まだ頭に血が上っているらしい、と頭を振ってナルトは自身を諫めた。改めて己の殺気を抑える。
カタカタと震え、青褪めた紫苑がゆっくりと後ろを振り向く。ナルトと目が合って、彼女の瞳からぽろり、涙が零れた。
「…ナルト……」
【魍魎】を封じるどころか肉体を取り戻させてしまった。妖魔を封じる為に磨いた術や技の全部が徒労に終わった。
巫女の存在意義すら失ってしまった。
「私は…お前に守ってもらう価値など…無かった」
その一言を最後、紫苑の足元の地面が無くなった。
石の祭壇が裂け、地が割れる。
叫ぶ間もなく、裂け目の中へ紫苑の身体が飲み込まれてゆく。その割れ目はどこか、巨大な龍の口を思わせた。
そうして何事もなく、閉ざされてゆく地面の亀裂。
巫女を取り込んだ漆黒の龍の鳴き声が、溶岩湧き立つ洞窟の中でこだまする。
その声の響きは、【魍魎】の声音と同じだった。
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