百十二 驚天動地
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魂に肉体を取り戻させるわけにはいかない。
しかしながら、巫女の願いむなしく、紫苑の身体は軽々と棺から引き?がされた。
黒い瘴気として渦巻いた【魍魎】は暴風と化して紫苑を易々吹き飛ばす。結界内に入るのに利用した死体が【魍魎】の風で結界をすり抜け、外へ転がり出た。
だが同様に吹き飛ばされた紫苑は、結界に阻まれた。バチバチとした強い衝撃が彼女の背を強かに打って、紫苑は叫び声を上げる。
それは巫女もまた、【魍魎】と元は同じ存在である事実を露わにしていた。
巫女と魔物が元は一つであり、善と悪、陽と陰に分かれた存在だという黄泉の戯言は、真実だったのだ。
『一度張った結界からは我らは出ることは出来ぬ。そう…どちらかが一方を取り込むまでは…』
そして皮肉にも、紫苑が張った結界により、ナルトが結界内へ助けに来ることは出来ない。
もっとも零尾を体内で食い止めていたナルトに紫苑の救助を求めるのは酷だろう。【魍魎】に加えて零尾まで暴走させてしまうわけにはいかなかった。
棺の真上に陣取った【魍魎】がせせら笑う。
結界に弾かれた激痛に耐え、紫苑はキッと【魍魎】を睨み据えた。
「わ、私の力がお前に勝てば…ッ」
『フフフ、そうだな…。取り込まれるかどうかは互いのチャクラに掛かっておる。逆もしかり。お前のチャクラが我より勝っているのならば、我は再び封印されるであろう。だが、お前にソレが出来るかな?か弱き巫女よ』
世界を滅ぼすほどの絶大な力を持つ魔物と、巫女と言ってもただの人間である紫苑を比べるまでもない。
虚勢を張る紫苑を一笑に付して、とうとう【魍魎】は己の肉体を封じる棺に手をかけた。
棺がゆっくりと開く様を、紫苑は床に伏したまま、唇を噛み締めて見つめる。結界による衝撃で、まだ身体が痺れていた。
『今こそ…還してもらおう――――我が肉体を』
哄笑と共に、【魍魎】は紫苑を更に絶望へと突き落とした。棺の蓋が勢いよく閉まる。
四隅にある宝玉の輝きがみるみるうちに消えてゆき、石の祭壇に施された封印の紋章も光を失う。そこでようやっと、紫苑の結界は解かれた。
残されたのは、ただ項垂れる巫女のみ。
「私は…なんてこと…。今まで…何の為に……」
紫苑の脳裏に、今まで巫女の身代わりとなって死んでいった者達の姿が次々と過ぎる。
それが全て無駄死にだったこと、そして己が仕出かした失態に、紫苑は力なく頭を垂れた。
やがて、あちこちで落盤が起き、洞窟全体が激しく揺れる。
次いで、紫色を帯びた黒く巨大な柱が、突如として地面を突き破って現れた。それはまるで生き物のようにヌルヌルと蠢き、龍のように鎌首をもたげる。
広大な洞窟のそこかしこから現れたその奇妙な存在が、【魍魎】の本体であり肉体のよう
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