百十二 驚天動地
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力を持つ巫女であり、更には鈴の結界があるからこそ、彼女はナルトの傍にいることが出来る。
しかしながら、鈴による強固な結界の中にいながらも、紫苑は喘いだ。魚のようにパクパクと口を開閉するのを繰り返す彼女と同じく、殺気を向けられている黄泉もまた、口をあんぐりと開けたまま、硬直していた。
『た、たかが人間風情が…そんな馬鹿な…ッ』
驚愕の響きを伴った【魍魎】の声が、黄泉の口から這い出る。カタカタと自然に震える指で、妖魔【魍魎】を身に宿した黄泉はナルトを指差した。
『な、何者だ…ッ!?』
顔を俯かせ、無言で佇んでいたナルトがゆるゆると目線を上げる。金の前髪の陰間から覗く蒼の双眸が、かつて大陸を蹂躙した魔物を震え上がらせた。
「…―――ただの、忍びだよ」
【魍魎】の器である黄泉が、ナルトに気を取られている間、紫苑はハッと己の為すべき事を思い出す。魔物を封印さえすれば、この場は終わる。ナルトの殺気もきっと、治められる。
紫苑は封印の儀式に集中し始めた。封印の紋章が施された石の祭壇の上、彼女はひそやかに呪文を唱える。
まずは【魍魎】の魂を、肉体が封印されている棺から遠ざけなければならない。その為の結界を張ろうと、紫苑は腕をピンと伸ばした。鈴の美妙な音が鳴り響く。
足元の封印の紋章。
その四隅に埋め込まれている宝石が、紫苑の呪文に呼応して眩く光り出した。紫苑の足が僅かに浮き、ややあって封印の紋章が明るさを帯びる。
石の祭壇に描かれた紋章が円を描いて結界を張った。やがて、巫女の詠唱により、祭壇の中央がせり上がってゆく。封印の紋章が輝くにつれ、石の祭壇に沈んでいたモノが徐々に姿を現した。
それこそが、妖魔【魍魎】の肉体が封じられし棺だった。
己ほどの強大な力を宿す魔物が、何故、こんな子ども一人に慄くのか。
ただの忍びだと、ただの人間だとのたまう少年を前に、黄泉は喚いた。
『冗談も休み休み…ッ』
「煩いな…―――少し黙れ」
不意に、黄泉の身体が引っ張られるように宙を舞う。
刹那、黄泉の口は遠く離れていたはずの少年によって塞がれていた。何が起きたのか、黄泉も、黄泉の中にいる【魍魎】も理解出来なかった。
ただわかっているのは、今、黄泉の口はナルトの手で押さえられている。
黄泉の顔を掴んでいるその手は、子どもらしく小柄で細い。にもかかわらず、大の大人である黄泉が渾身の力で外そうとしても外せない。顔の下半分を掴んでいる手は、黄泉がどれだけ暴れてもビクともしない。
黄泉はおそるおそる目線を上げた。己の口を物理的に黙らせた少年の眼が見下ろしている。その瞳の蒼を見た瞬間、黄泉の全身が粟立った。
愚かな奴だと冷たく光る、蒼の
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