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渦巻く滄海 紅き空 【上】
百十二 驚天動地
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のか、顎を撫でる。

「…ああ、そうか。お前は俺と同じ出身だったな」
「どういう意味だよ」

青銅の山を踏み越えて再不斬の傍に来た水月は、くらくらする頭を押さえた。なんとか気絶するのは防げたが意識は朦朧としている。
それだけ強烈なナニカに襲われたということだが、水月にはソレが何なのか判別できなかった。

「俺とお前が気絶せずに済んだのは、今のと同じモンを一度経験したからにすぎねぇってことだ」
「はぁ?今のって…さっきの風か?そんなの、」
覚えがない、と言おうとした水月は、やがて眼を見開いた。
「え…まさか。昔、水の国で一斉に集団気絶した原因不明の大寒波のことか…?でもアレは」
言い淀む水月に、皆まで言うなとばかりに再不斬は手を振る仕草をする。


いつかの中忍試験では、みたらしアンコのみを特定して身動き出来ぬほどのものだったが、コレは常軌を逸している。昔のあの時でさえ、霧隠れの里どころか一国に影響を及ぼしたのだ。
今回のは隣国にまで影響を与えているのではないか。

再不斬の予想は果たして、正しかった。今まさに、気絶までもいかないものの、鬼の国を越して近隣の火の国にまで、あの一陣の風は届いていた。
冷気を伴った単なる風が幽霊軍団を蹴散らし、人を気絶にまで追い込むだろうか。いや、アレは…――。


深刻な表情で再不斬は彼方を見た。
その視線の先は、白達が鬼の国の巫女を送り届ける手筈となっていた沼の国の祠。仮にもし、あの寒波の発生源が沼の国からだったとしたら、影響は一国だけにとどまらない。
昔のあの時以上に増大しているソレを身に染みて感じ取った再不斬は、愚の骨頂だ、と呻いた。

「誰だ、アイツを怒らせた馬鹿は」



一陣の風。アレに伴っていたのは冷気ではない。
殺気だ。

遠くにいる人間までもを気絶させるほどの殺意。
ソレの発生源であるナルトに、再不斬は思いを馳せる。足元に散らばる青銅の欠片が乾いた音を立てた。




























沼の国の祠。
【魍魎】の肉体が封じられている洞窟の中、満ちるのは濃厚な殺気。

眼に見えるほどに黒々とした殺意がナルトの全身から迸るのを、紫苑はただ見ることしか出来なかった。否、息をするのがやっとだったのだ。

「俺の身体は、俺の…――うずまきナルトのものだ」

普段、感情を表に出さないナルトの怒りがビシビシと伝わってくる。鈴の結界が無ければ、紫苑はとっくの昔に気を失っていただろう。
それほどの重圧と殺気が洞窟の中、渦を巻いていた。


ただの人間ならば即座に気絶する状況下で、紫苑が意識を保てるのは、ひとえに彼女が巫女だからだ。強大な魔物【魍魎】を封じる
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