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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第三話 アントン・フェルナー
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抗議しようとした俺をアントンは落ち着いた声で制し話しなじめた。

「先日のクロプシュトック侯反乱鎮圧からブラウンシュバイク公を始め、俺たちは危機感を持っていた」
「危機感?」
「絶望感といってもいいかな。このままでは内乱になったとき間違いなく負ける、そう判ったからだ。貴族連合なんて、何の役にもたたない。いやというほど思い知らされたよ」
アントンの声には苦味がある。余程のことがあったんだろう。
「……」

「どうしたらいいか毎日考えたよ。だが良い案がなかった。単純に皇位継承争いから降りるといっても周りが許さない。それなりの実利がないとな。家の存続がかかっているんだ、皆必死さ。まるで迷路の中を歩いているような気分だった。うんざりしたよ」
苦味は益々強まった。嘘はついていない、だがそれと養子話がどう結びつく?
「……」

「そんな時だ、ブラウンシュバイク公がエーリッヒとフロイラインを結婚させると言い出したのは。呆れたよ、気でも狂ったかと思った」
いまでも呆れてるんじゃないか、こいつ。
「……」
「しかし、公の話を聞いているうちに行けると思った。それからは大変だった、公とアンスバッハ准将、シュトライト准将、そして俺、四人で一日中考えた。考えれば考えるほど、上手くいくと思えた。興奮したよ、馬鹿みたいに騒いだ。俺たちは助かるってね」

「何故だ?」
「エーリッヒを養子にする。そして公は隠居し、エーリッヒが新当主になる。当然軍の階級もそれなりのものが用意されるだろう。ま、上級大将かな。飾り物の上級大将じゃない、実力のある上級大将だ。ナイトハルト、卿は戦争に行っていてわからんだろうが皇帝陛下不予の折オーディンを支配したのはエーリッヒだった。階級が低いから皆認めたがらないが実力で言えば帝国軍三長官に次ぐ実力者なんだ。その実力に相応しい階級をブラウンシュバイク公爵家が用意する」

眼が据わっている。いつもの茶化すような眼じゃない。アントンは本気だ。俺は思わずフィッツシモンズ少佐を見た。少佐は睨むような眼でアントンを見ている。
「……」
「ブラウンシュバイク公爵家は宮中での力と新たに軍での力を得るんだ。十分元がとれるさ」
確かにそうかもしれない。しかし……。
「しかし、そんな事を国務尚書が認めるのか」
「認めるさ」
アントンは、あっさりと断定した。
「!」

「皆内乱なんてしたくないんだ。リッテンハイム侯も内乱になれば負けるのはわかっている。リヒテンラーデ侯も国内が乱れるのは避けたい、軍も反乱軍を相手にしている現状で御家騒動なんて御免だと思っている。特にミュッケンベルガー元帥は深刻だ。内乱が何時起きるか判らない状況ではおちおち外征できない。皆内乱は避けたいんだ。ただ、どうしようもなくて此処まで来てしまった。きっかけさえあ
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