第三話 アントン・フェルナー
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驚いたようだ。ギュンターに話しかける。
「どうしてここに」
「憲兵総監から命を受けた。訳はアントンが知っているようだな」
「憲兵総監……そうか、そうだね、きっちりと聞かせてもらおう。ここじゃなんだから、場所を変えようか」
エーリッヒは引き攣ったような笑みを浮かべて俺を見る。
「それがいいだろうな」
ギュンターはにこりともしない。お前ら、そんなに俺にプレッシャーかけて楽しいか?
俺たちが案内されたのは兵站統括部の地下2階にある資料室だった。通称「物置部屋」と言うらしい。ナイトハルトは一度きたことが有るようだ。“懐かしい”と言っている。お前はいいよな、暢気で。俺は処刑場に引かれていく死刑囚の気分だ。フィッツシモンズ少佐も入るように言われてちょっと戸惑いながら入ってくる。怯えているのか?
■帝国暦486年7月11日 兵站統括部地下2階 資料室 ナイトハルト・ミュラー
どうも変だ。ギュンターもエーリッヒもにこりともしない、明らかに怒っている。フィッツシモンズ少佐はなにやら怖がっている感じだ。アントンは平静を装っているがこいつも緊張している。何があった?
「さて、アントンどうしてこうなったか、聞かせてもらおうか」
エーリッヒはいつもとは違う引き攣ったような笑みを浮かべている。アントン、一体何をやった?
「いや、まあ、その、怒ってるか、やっぱり」
「当たり前だ! この私が、ブラウンシュバイク公の養子とはどういうことだ」
「養子! ブラウンシュバイク公の」
思わず俺は声を上げ、フィッツシモンズ少佐と顔を見合わせた。彼女も驚きで混乱している。
「ちょっと待て、ブラウンシュバイク公の養子って何の話だ?」
何だそれ? おかしくないか?
「その通りの話さ。ブラウンシュバイク公が私を養子に欲しいそうだ」
エーリッヒはとげのある口調で答える。視線はアントンに向けたままだ。
「フロイライン・ブラウンシュバイクとはどうなるんだ?」
まさか結婚するのか、相手は皇帝の孫だぞ。
「結婚するらしいよ、私と」
「つまり婿養子か?」
「違う、養子が先で、結婚はあとだ」
よくわからんな。何処が違うんだ?
「しかし、そんな事出来るのか? 大体ブラウンシュバイク公はフロイラインを皇帝にしたかったんじゃないのか」
「諦めたんだろうね」
「諦めた?」
「ああ、そこにいるアントンが説得したんだろう、違うかな」
エーリッヒは好意の一欠けらも無い視線でアントンを見る。つられて俺もアントンを見た。
「ああ、少し違うな。最初にフロイラインの夫に卿をと言い出したのはブラウンシュバイク公だ」
こいつの悪いところは、どんな状況でも平然としている事だ。可愛げがまるで無い。
「だからって」
「落ち着け、最後まで話を聞け」
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