マイ「艦これ」(短編)「トモダチっぽい・前編」改1.6
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来たんだ」
「ああ、有り難う」
そっか。気が付かなかった……。
ミサトから缶ジュースを受け取った私は夕立に渡した。
「飲める?」
「うん」
夕立はチラッと缶ジュースを見ると直ぐにフタを開けた。
シュッという音がして甘い匂いが漂う。喉が渇いていたのだろう。彼女は「頂きます」と言いながらジュースを一口飲んでホッとした顔をする。
「へえ、夕立の世界でも缶ジュースはあるんだね」
感心したように言ったミサトは近くのイスに腰をかけると自分のジュースを開けた。
「うん、あるっぽい」
初めて安堵したような表情を見せる夕立。その自然な笑顔を見て私もホッとした。
私はミサトが持ってきたタオルを彼女に見せつつ聞いた。
「まだ使う?」
「うん」
夕立はジュースを床に置いて私からタオルを受け取るとサッと広げた。
どうするのかと見ていたら迷うことなく自分の顔をゴシゴシと拭き始めた。まさか……? その萌えキャラに似合わない大胆な行動に私は思わずミサトの顔を見てしまった。
だが彼女はニタニタして言った。
「うーん、……っぽいなあ」
「は?」
私が困惑していると夕立は「はぁー」と言いながら顔を上げた。
「サッパリしたっぽい!」
彼女はニコニコしながら言った。表情がかなり柔らかくなってきていた。
その姿を見て、ああ、そうか……と私は納得した。
この夕立は、たとえその風貌が萌えキャラだったとしても中身は本当に「艦娘」……いわゆる戦士なんだ。
そして、どういう理由か分からないけどゲームの世界からやってきに違いない。
「ゲームの世界」
私は思わず呟いた。そして冷や汗が出てきた。
「どうしたの?」
ミサトと夕立が私を心配そうに見る。
何となく直感で悟った。この夕立は私がプレイしていたゲームの世界からやって来たに違いない。だから……私は昨夜のゲームプレイを思い出していた。
彼女をこんな目に遭わせたのは他でもない私自身なのだ。
そう思うと急に悪寒のような、妙な震えが来た。思わず自分の腕を擦った。
すると夕立は立ち上がって私に近寄ってきた。そして私を軽く抱きしめて言った。
「大丈夫っぽい……私の提督は、とても優しい人だって、たった今、分かったっぽいから」
ああ、彼女にも何となく分かっていたんだ。私が提督だったこと……。
涙が溢れてきた。
「ご免なさい……」
私も彼女を抱き締めた。とても暖かい。そして夕立の少女っぽい独特の香りを感じた。
本物の艦娘か……でも、これからどうしようか? 私は不安になって来た。
取り敢えず彼女を守らなきゃ。
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