32秋子の昔話
[10/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
の手によって、二匹の前に差し出されました」
最初は泣いていたはずの秋子ちゃんは、この下りになると、とても楽しそうに、力強く語っていた。
「怒りに我を忘れた二匹は、当然のように親子の命を求めましたが、青年は咎める様子もなく、ただ元気になった娘を見て喜びました。そして娘の戒めを解きながらある事に気付き、こう問い掛けました、「私の子を身籠ってくれたのか?」と」
「あの、その親子って、誰なんですか?」
該当者から自分と名雪が外れたので、それが誰なのか聞いてみたが、秋子ちゃんは話のウェストを折られ、ちょっぴりご機嫌斜めになった。
「川澄さんです」
「…………」
秋子ちゃんは、祐一にダメージを与える答を口にすると、またニヤリと笑った。
(姉さん… なのか)
舞がハーフで、自分が純生らしい。その場合、二人は異母姉弟の仲になる。
「娘は「はい」とだけ答えると、また泣き始め、青年に優しく抱き寄せられました。しかし、その様子を見た年長の妖狐が怒り狂い、娘を引き離すよう命じたので、人間達は恐れおののきましたが、年少の妖狐には何が腹立たしいのか理解できませんでした」
今は大人の秋子ちゃんも、当時は恋愛感情が分からなかったらしい。
「青年は娘に自分の寿命が短い事を伝え、別れを告げました。そして娘や人間達に人が欲しがる紙の束を分け与え「この娘と私の子を宜しく頼む」と言ってその場を立ち去ると、妖狐達も青年の穏やかな表情に毒気を抜かれたのか、人間達に注意を与えると慌てて後を追いました。巣に戻ると、青年は二匹の妖狐に「ありがとう」と言い、満足した表情で丘に帰ろうとしました。ものみの丘に戻るのは、青年が消える事を意味しましたが、年長の妖狐はそれを許さず、縋り付いて「帰るな」と泣きました。それは人となって、温もりを知ってしまった哀れな妖狐の姿でしたが、不思議と侮蔑の念は浮かばず、崇高な物でも見る思いがしました」
あの母親が、そんなしおらしい態度を取ったなど想像もつかなかったが、祐一にもようやく、この話を語ったのが父親で、書き写したのが秋子、途中で怒り狂ったのが母親だと分かった。
「青年は妖狐に請われて人里に残る事になりました、それは陰ながら我が子を見守り、残りの命を二匹の妖狐への感謝の為に捧げようとしたからです。しかし、その後も青年に力を与え続け、狐に戻る事も叶わなくなった妖狐も、人として生きる他は無く、もう一匹もそれを放っておけませんでした。力を失った時、人間の報復を恐れたからです、その時から二匹は姉と妹となり、青年や子供を見守る事になりました」
ちなみにそれは、秋子ちゃんと祐一は血縁が無く、叔母、甥の関係ではないと言う意味でもある。
「姉は僅かな妖力で仲間の元に戻り、青年が生き残る方法を探りました。そして残された方法は、もう一匹の妖狐とも交わらせ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ