32秋子の昔話
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れば自害さえ有り得る。このまま逃亡生活を続け、山奥にでも篭って体の改造を待とうかと真剣に考えた。
「逃げる必要はありませんよ、二階にいる真琴はそんな悪い子じゃありませんし、祐一さんのお嫁さんを酷い目には合わせません。まあ、嫁姑の関係が悪化するのはよくあることですが」
怖すぎる姑に恐れを抱き、震える真琴。秋子の表情は純血の妖狐を我が子のように呼んでいるが、グリズリーやサイと生活していれば、ちょっとじゃれ付かれただけで首が飛ぶ。子供の虎やライオンと遊んでいると、頚椎を甘噛されて脊髄を切断されてしまう。
『じゃあ、皆さん寝ているようですし、パーティーの食材が来るまで休んで下さい』
「「えっ……?」」
栞は同じ中学だった美汐を「お前どこ中よ?」みたいな顔で睨んでいたが、真琴と一緒に眠らされた。
「皆さん寝てしまいましたね、祐一さん、何かお話があるんじゃないですか?」
残り二名が強制的に眠らされたのは怖かったが、美汐の言葉で気になる所があったので早速聞いてみた。
「じゃあ秋子さん、ちょっと教えて欲しいんですけど」
「はい?」
秋子ちゃんは、祐一君に「女の子の体の仕組み」とか「女の子の悦ばせ方」を聞かれるのではないかと思い、ちょっとドキドキした、かも知れない。
「叔父さんってどんな人だったんですか、それと…、俺の親父の事も知っていたら教えて下さい」
秋子ちゃんは期待が外れたのか? ちょっと困った顔をしたが、やがていつもの表情に戻ってこう言った。
「じゃあ、少し昔話をしてあげますね」
「は?」
何となく茶化されているような気がしたが、食事をするテーブルに移動して、お茶を出されて向かい合って座る二人。
「いつか話さないといけないとは思っていました、でもまだ名雪には内緒ですよ」
「はい」
秋子の手には挿絵の入った古いノートがあり、この日を待っていたかのように最初のページを開いた。
「ある日、一人の青年が、ものみの丘に登って来ました。でもその青年は自分の名前も知らず、どこに住んでいたのかも、何も覚えていませんでした」
(それが親父か叔父さんなのか?)
余りに真琴に似た状況を聞き、母親や秋子が事件に巻き込まれて行く予感に胸を高鳴らせる。
「でも、その場所は青年にとって懐かしい場所だったらしく、熱に火照った体を雪の中に横たえると、静かに目を閉じ、最後の瞬間を待っていました」
(最後の発熱か、でも親父は生きてるから叔父さん? だったら名雪がハーフなのか)
「そこに、近くの巣穴から狐が現れ、倒れた青年を舐めたり、服に噛みついて目覚めさせました。その青年も狐の言葉が分かったらしく、請われるままに今までの話を始めました…… ただ一つの記憶、街に住む娘との出会いと別れの物語を」
そこで秋子は一筋の涙を流した、まだその娘が
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