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KANON 終わらない悪夢
32秋子の昔話
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、全てが妬ましい。この女が幸せな子供時代を送ったのも妬ましいが、両親が死んで、病気の妹と一緒にたらい回しにされて保険金も奪われ、祖母の所で粗末な暮らしで苦労した感情は美味い、極上だ」
 嫉妬の魔物だけあって、憑依者の負の感情をエネルギーとして動いているのか、嗜好品として楽しんでいるらしい。
「この女は欲が少ないが知識に関しては貪欲なようだ、人間が手にしてはならない知恵の実の全部と、生命の木の実をたらふく食わせてやろう。ふふっ、面白い、こいつからは呪いと憎しみと穢れと罪を盗んでやる。そうすればこいつは無原罪の存在となって、神にも近い存在になるのだ、真理に辿り着かせ、たっぷりと苦しませてやる」
 佐祐理や祐一にはその意味が分からなかったが、色々と苦労させられる気の毒な状態にされるのは理解できた。
「さて、私も眠らせてもらうとしよう、体の中でこいつを味わってやる。何だ? 心配するな、心や魂は食べない契約だ、安心するが良い」
 そう言って、ソファーに転がっている美汐や緒路院の隣に座って眠り始める魔物。
 舞は残った月人を呼ぶ前に佐祐理を呼び、隣に座らせた。
「…佐祐理、私の右手を受け取って、この子が佐祐理の体が燃えてしまわないようにする、受け止めて」
「いいんですか? そんなことをしたら、舞はまた空っぽに」
「…構わない、一人には慣れてる、悲しい心なんていらない、でも佐祐理の体が消えるのは嫌」
「そう、ありがとう、舞」
 抱き合った二人は体の一部を交換し合い、悲しみと水の精霊が佐祐理に宿り、怒りと憎しみの炎を消し、体が燃え尽きてしまうのを防いだ。
 舞には佐祐理が持っていた大きな悲しみや悔しさが宿り、泣き出さないように抱いて優しく包み、眠りに落ちた佐祐理の体の姿勢を整えてやった。
「…さあ、最後は貴方。私の左手、炎の精霊を預ける。でもその前に約束して、佐祐理や祐一を守って、傷付けないと誓って」
「はい、了解しました」
「…貴方の心は食べない、でも、心の奥に私たちに刃向かえないよう杭を刺す、いいでしょ?」
「ええ、構いません、今後、貴方やお姉様に仕えます、決して背いたりしません」
 少女は騎士のように膝を屈し、今後自分の主となる相手に頭を下げると、顎を持ち上げられ唇を重ねられた。
「あっ、うううっ!」
 土や木といった刺激の少ない精霊と違い、宿った途端に自分の弱い部分を燃やして、強い部分だけを残して再生して行く精霊。
 天使の人形と使い魔の契約とは、半人半妖の人間が出す化け物を、純血の妖狐に宿るものと同じ、精霊へと変化させるもので、契約とは名ばかりの特殊な妖術であると理解させられた。
「…眠りなさい、貴方の弱い所が消えて無くなるまで」
「は、はい……」
 ソファーの上は、気を失った少女で溢れ、舞の家の時と同じように、屍累々
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