32秋子の昔話
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、異質な力で妖力を全て消し去る以外に無かったのです」
名雪が自分の妹である確証に近付き、身を震わせる祐一。血を分けた妹とは、もう何度も交わってしまっていた。
「巣に帰った姉は妹に縋り、青年の命を永らえる方法を伝えましたが、どうか青年が気に入っても、自分から取り上げないで欲しいと言って、また泣きました」
(あのババアが?)
「祐一さん、ババアなんて言っちゃあ可哀想ですよ、まだ若いんですから」
美汐や佐祐理と同じく、とうとう祐一の心の声に答えた秋子ちゃん。
「えっと、全部聞こえてました?」
「ええ、昔からずっと(ニッコリ)」
それは、真琴を拾って匿っていた間の会話「沢渡真琴と言う片思いの女の子の一連の話」以外にも、一人で発電する時、「名雪っ」とか、「栞っ」とか、「秋子さんっ」と考えていたのも、1階で全部聞こえていた、と言う意味でもある。
「祐一さんの声って、よく聞こえるんですよ」
「は、はあ……」
もちろん、誰も来ないはずの森の奥で泣いている祐一の声を聞き付け、あゆを連れて病院まで送り届けたのも、秋子達の力だった。
「でも、俺には秋子さんの声って聞こえないんですか?」
「え? 私は最初から、声には出してませんよ」
「はぁ?」
「ほら、こんな時って、名雪が珍しく早く帰って来て、ドアの向こうで聞いているのがお約束じゃないですか、だから」
カチャ、バタバタバタッ
そこで、「まるでドアの向こうで盗み聞きしていた名雪が、驚いて走り去った」ような音が聞こえた。
「名雪っ!」
「名雪なら大丈夫です、それともこれで終わりにしますか?」
「いえ、続けて下さい」
しばらく、まともな会話すらしていなかったので、今行っても無駄だと思えた。それに、この話を聞き終えれば、すべてが解決するような気もした。
「姉さんって、丘にいた頃から祐一さんのお父さんに憧れていたんです、ですから力を分ける時でも自分から進んで。それに私にはもう「見るな、触るな、近寄るな」って大変だったんですけど、さすがにこの時だけは違いました」
秋子は明らかに「姉さん」と宣言した、しかし語るに落ちたのでは無い証拠に、再び本に目を落とし読み始めても、口を閉じて、声を出している振りはしなかった。
「そこで姉は、血を交える事は狐に戻る力や、様々な能力が失われるとは、どうしても言えませんでした。もし妹が断り、青年が消えると考えただけで耐えられず、まるで人間のように、仲間でさえ騙せるほど落ちぶれ果てていたのです」
(凄い、舞や天野より良く聞こえる)
明らかに声とは違う二人と違い、秋子ちゃんの心の声は、実際に聞いているのと何ら遜色は無かった。
「妹はそれを快諾し、姉の体に宿った新しい命の為にも、青年と姉には長生きして欲しいと言いました。それは嘘や偽りでは無く、本心か
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