暁 〜小説投稿サイト〜
一人のカタナ使い
SAO編?―アインクラッド―
第二章―リンクス―
第20話 償いの任
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眠る黒の剣士よりも――黒の剣士も男にしては長い方だが――長い黒髪が夜空の下で風になびく。
 ――はあ。
 あたしのじゃない深いため息が風に乗る。
「姉ちゃん、か……うらやましいな〜……」
 話しかけようと思い開いた口を噤んでしまう。
 羨ましい。ユウはそう言ったのだ。
 どういうことか、と考えようとすると無意識に片足を動かしていた。それが近くにあったテーブルにぶつかった。
 発生した音にユウが振り向く。驚きの表情から安堵と何か別の感情が混じった表情に変わる。
「ニナさん、起きてたんですか?」
「ついさっきね、あんたはやく寝ないと背伸びないわよ?」
「あはは、大丈夫ですよ。今はどんなに寝たって身長は変わりませんから」
 あたしのちょっとしたジョークを笑って返す。何か、少しだけイラっとするな、きれいに流されすぎて。
 あたしは口許を和らげながら、ユウの隣に立った。
 気持ちいい夜風だ。たまには深夜にそよ風を浴びるのもいいかもしれない。そう思えるぐらいに心地よく優しい風。
「……さっきの、羨ましいってどういうことよ」
 あたしの言葉にユウの顔がわずかに驚く。そしてまた笑った。前々から思っていたが、ユウはどんな感情になってもとりあえずは笑うタイプらしい。
「聞いてたんですか。……あはは、恥ずかしいな〜」
 照れ隠しなのか、ユウは雑に髪をガシガシとかく。そして流し目であたしの方を見た。
「――ちょっとリアルの話になっちゃうんですけど、いいですか?」
「いいですかって……あんたのリアルだから、あんたが選びなさいよ、言いたいか言いたくないか。話したとしても、別に誰かに漏らしたりしないわよ」
「……そうですね。じゃあ、話します。誰かに聞いて欲しかったですし、愚痴みたいなもんですよ」
 小さく息を吐いたあと、カタナ使いは静かに語りはじめる。何も言わずあたしは聞き手にまわることにした。
「――僕、姉がいるんですよ。姉は僕と違ってゲームするのが苦手で、でも、ゲーム自体は嫌いじゃなくて、いつも僕がゲームしてるとき姉は楽しそうに見てました」
「ふーん、いいお姉さんね」
「そうですね。今考えると、いい姉ちゃんでした。いなくなってから――会えなくなってから気づくことってあるんですね……」
 側から見ても、聞いていてもユウが落ち込んでいっているのがわかる。声をかけようとしたが、ユウの話の続きが先だった。
「だからかな、ニナさんとソラのやりとり見てたら思い出しちゃうんですよ、どうしたって。今まではあんまり思い出さないようにして何とかなってたけど、やっぱり姉ちゃんと会えないと辛いっていうか……物足りないっていうか……」
「……ふーん、そういうことね……」
 あたしは目を細めてユウを見る。
 昼間まであった彼のフィールドを駆け回るプレイヤ
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