30美汐の嫁入り、栞の復讐
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何か話そうとしたが、泣き出さないように、辛い話は早々に切り上げてしまった。
「まだ辛かったんだな、でも話した方が楽になるって言うだろ」
「はい…」
「次はもっとゆっくり話してくれよ、そうだ、家に来ないか?」
「えっ?」
そう聞いて美汐はまた頬を赤らめた。その心中では「それは相沢さんと二人っきりで、胸の中で思いっきり泣いても構わない、と言う意味ですか?」と考えていた? のかも知れない。
「真琴もいるからさ、また見に来てくれよ、ははっ」
女の子を家に招待して驚かれたので、下心が無いのを伝えておく。
「そうですね」
しかし、真琴の名前を出され、何となく声が沈み、がっかりしているようにも感じた。
(二人っきりの方が良かったのか?)
今度は「何か言いましたか?」では無く、さらに顔を赤くしてしまう美汐。
「でも祖母も、あの子の事を祖父の親類と言っていたのですが、今にして思えば本当に血縁があったんですね」
その言葉を飲み込み、反芻してみる祐一。
「え〜っと、天野…… お前って、もしかしてクォーター?」
「はい、祖父は妖狐だったと聞かされました」
「…………」
もう二の句が次げない祐一、しかし、ここまで話して貰えたのは、同族と認められた証しでもある。
「いつか言いましたよね、もしかすると、この街の半分は、あの子達と同じなのかも知れないって」
半分が妖孤なのでは無く、狐の血が半分混じっている、と言う意味らしい。
「そう言う意味だったのか……」
「これも祖母から聞いたのですが、女性が降りて来た時は、子供を産んでから丘に帰り、男性が降りて来た時は、その」
「子作りするには、一ヶ月もあれば十分な訳だ」
「知りませんっ」
余りに下品な表現に、横を向いてしまう美汐。
「しかし、無責任な話だな、事が済めばさっさと消えちまうのか、子供の事も考えろってんだ」
「いえ、昔は霊力が強い子供が欲しい家では、丘に行って嫁を差し出したり、女が生まれると口減らしに殺されていた時代では、嫁のなり手が無く、重宝されたそうです」
先程から怖い話しかしない美汐に、祐一も怖くなって引いていた。
「天野、お前、民族史の研究家になれ」
「悲しすぎる話は嫌いです、それと」
「それと?」
「余命幾ばくも無い者は、妖孤と血を交え、命を永らえたと伝えられています」
「それって?」
栞と香里じゃないか、と口に出かかったが、自分は純血の妖孤では無いと気付き、口をつぐむ。
「最近、そう言った話をよく耳にするのですが、相沢さん、身に覚えはありませんか?」
「俺が?」
しかし、友達付き合いの無いはずの美汐が、何に噂を聞いたのかは、怖くて聞けなかった。
「はい、失礼ですが、相沢さんの家族構成を教えて頂けませんか?」
「え? 今は叔母さんの家
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