30美汐の嫁入り、栞の復讐
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ないけど秋子さんとか舞だと、電話番号を知らないでも掛けられるみたいだ、そこは察してくれ」
「はあ」
そんな術も聞いたことはあるが、自分にはできないので、ドン引きしたまま話す。
「実は真琴が帰って来たから、早めに教えようと思って」
「真琴が? 帰って来たんですかっ」
魔物関連の話は禁止されたので、マコピー帰還だけは伝えておくが、祐一の言葉に、いつも冷静なはずの美汐も驚いていた。
「ああ、さっき「ただいま?」とか言って帰って来てな、今は二階で寝てる」
真琴が消える前から、同じ悲しみを背負う者同士、度々会って親しくなって行った二人。特に心を開ける友達のいなかった美汐は。
(ある条件が揃った時、妖狐は定着する事がある、でもそれは?)
「あの、もしかすると相沢さんと真琴は、別れる前、契りを結ばれたのですか?」
そう言いながら、はしたない言葉を使って、赤くなってしまった頬を隠す。
「ん?相変わらず天野の話はオバ、いや、古めかしいな、そうだ、俺達はあの丘で結婚式を挙げて結ばれた、凄いだろ」
「そうでしたか……」
視線を落としながら、不安が的中したので美汐の心に痛みが走った。本当なら再会した瞬間から恋に落ち、最後の発熱が始まる前に、身も心も結ばれて子供を身篭っていれば、泡になって消える事も無く、幸せになれる展開があったらしい。
しかし、栞を選んだ時点で美汐とは会えない、さらにマコピーエンドまで迎えるのは、体が2つ以上ないと不可能だった。
「でも、あのバカが帰って来るんだから、お前が会った友達も帰って来るんじゃないか?」
「あの頃は小学生だったんです、そんな深い仲になれるわけがありません」
(高学年ならオッケーじゃないのか?)
「何か言いましたか?」
「いや、何でもない」
思わず真琴と美汐が絡んでいる、良からぬ情景を思い浮かべようとしたが、刺すような声に耐えられずに諦めた。
「良かったら、お前の友達の話も聞かせてくれよ、呼びもしないのに帰ってくる奴がいるんだから、探したら出てくるかも知れないだろ」
一番触れられたくない話を聞かれ、寂しそうな表情をする美汐だが、話せば何故か手掛かりが掴めそうな気もした。
「わかりました、相沢さんになら」
何かを決心したように視線を上げ、思い出の妖狐との馴れ初めを話し始める。
「昔から、人見知りする私を見かねたのか、祖母は私を丘に連れて行ってくれました。 すると普段は人前に現れない狐達が出てきて、日が暮れるまで私と遊んでくれたんです。それを繰り返していた頃、祖母の家に私と同年代の子が遊びに来ていました」
辛い記憶を呼び覚まされ、すでに泣きそうな声と表情をして、話に詰まり出す。
「その後は真琴と同じですっ、4週間と2日一緒に過ごしただけで、あの子は消えてしまいましたっ」
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