暁 〜小説投稿サイト〜
KANON 終わらない悪夢
24舞と佐祐理
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哀れな祐一クンはこう思った。
(喰われる…)
 再び口を合わせても、香里のように噛みはしなかったが、お互いの歯がゴリゴリ当たるほど乱暴に口を合わせ、可能な限り舌を奥に押し込み、舌も、歯茎も、頬の裏側も狂おしい程に舐めて行く舞。祐一の心も体も魂も、何もかも欲しかったのかも知れない。
(だめだっ、舞、離れてくれ)
 口を封じられているので、心の中で叫び、鼻以外では呼吸もさせてくれない舞を拒む。
(私が嫌いなの? それともこんな汚い事したくないの? テレビで見たのに… 好きな人とはこうするって)
 とうとう祐一の心の声に正確に答えた舞。今までは教室の中で心の声で叫んでも、それに佐祐理が平然と答えても全く答えなかった舞が、体と同じように心まで晒そうとしていた。
(お前、聞こえるのか? ずっと聞こえてたのかっ?)
(聞こえてた… そんな事できるのは化け物だって言われる。でも祐一とだったら、もうどうなってもいいっ! 誰にも渡さないっ!)
 あの麦畑で、化物の自分と同じ力で遊んでくれた少年、あの場所を守っていた友達を取り返した今、舞にとっては世界が祐一と佐祐理と母親だけになっても構わないとさえ思えた。
(でも俺には他に女が一杯いる。約束した子がいるんだ、あいつらも俺がいないと死んでしまう)
(そんなの知らないっ、私も祐一がいないと死ぬっ!)
 そこで祐一には、舞の心の奥に「みんな消してやる、祐一の前にいられないようにしてやる」と言う、恐ろしい闇が見えた。
(お、お前?)
『そうよっ、私は化け物っ! でも祐一は遊んでくれたっ、あの日も、あの日も、ずっとっ、ずっと遊んでくれたっ! そうでしょっ?』
 やっと口を離した舞だったが、涙と涎で綺麗な顔はぐしゃぐしゃになっていた。しかし祐一も、不思議と汚いと言った考えは浮かばず、澄んだ心と同じ崇高な物でも見る思いがしていた。
「舞……」
 余りにも一途な思いをぶつけられ、その姿と心を見ても「美しい」とまで思ってしまった祐一。もちろんその思いは舞にも伝わった。
『抱いて…、私を傷付けてっ、祐一以外、誰も触りたくなくなるよう滅茶苦茶にして、祐一の物だって印を付けてっ!』
「ああ」
 それは油断した瞬間、心の全てを奪われたのか、迷子の犬がやっと見付けた飼い主に、全身でぶつかって来るのを受け止めるような物だったのか。祐一は心地よいような、恐ろしいような、奇妙な感触を味わっていた。
「ふっ、あふっ」
 今度は祐一から舞に口付けをして、経験豊かな?所を披露する。舞に命令されたせいなのか、既にその脳裏には、栞も香里も、誰も思い浮かばなかった。
「…ねえ、これから、これからどうすればいいのっ?」
 祐一の胸に顔を埋め、肩に爪を立てながら心臓の音を聞いている舞。今は胸の奥を掻き毟られるような感触と、運命の
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