新暦79年
覇王襲来
memory:28 覇王と影
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「その通りです。まだ見えぬ己の実力を知り、今よりもっと高みへと至るために」
イングヴァルトは自分の内に秘めた思いを込めて言った。
「強くなりたいのなら真面目に練習するなりプロの格闘家目指すなりしろよ」
イングバルトは諭すように話しかけるノーヴェの言葉にただ耳を傾ける。
「単なる喧嘩馬鹿じゃないことはお前の言葉でわかった。だからこんなこと、もうやめとけ」
だが、ノーヴェの言葉に首を横に振った。
「お気遣い、傷み入ります。ですが、私の確かめたい強さは―――生きる意味は―――表舞台にはないんです」
-side end-
-side 悠莉-
風呂上り。
イクスから解放されて一人、火照った体を冷ますべく潮風を感じていた。
「あーあ、こりゃダメだ。ノーヴェさん完全に血が頭に昇ってる」
目の前に映る映像を目にしながらつぶやく。
序盤、覇王と名乗る女性をノーヴェさんが圧倒していた。
想いをぶつけ合う中で、覇王の一言がノーヴェさんを乱すのに十分なものだった。
―――弱い王ならこの手でただ屠るまで
それを聞いた途端、ノーヴェさんの魔力が一気に膨れ上がった。
一気に力を生み出したが、その反面、冷静さにかけてしまいエアライナーを展開後、自称『覇王』にバインドを掛け、自分の想いとともに渾身のリボルバー・スパイクを撃ち込んだ。
「うわー、『覇王』も無茶なことを。肉を切らせて骨を断つとは言うけど、これはいくらなんでもありえない」
バインドを力ずくで引きちぎり、防御を完全に棄ててのカウンターバインド。
そして、足先から練り上げた力を右拳に込めたそれはを振り下ろされた。
―――覇王断空拳
「……ノーヴェさんの負け、か。あの時、怒りを自分の内で力に変え、冷静さを取り戻していたノーヴェさんならこんなことにはならなかったんだろうな。映像越しだけど、バインドの構成があまいようだったし」
ノーヴェさんとの別れ際に放っておいたウヌースたちを通して、ノーヴェさんと自称『覇王』の様子をリアルタイムで覗いていた。
影ウサギたちを放っていたのは、何かがありそう、といった予感めいたものをどことなく感じたからで、正直な所、それほど大きな理由は特にない。
「それにしてもイクスとヴィヴィオを屠る、だっけか。今すぐにでも殴りに行きたいけど……」
ノーヴェさんがキレてくれたおかげである程度落ちついていられた。
それがなかったら今頃はおそらく……。
「ご先祖様とはいえ、他人の記憶に縛られるなんて、こんなにも苦しいことはないよな」
故人の願いを叶えるためになんて可哀そうとしか言えない。
彼女に対する想い……結局は同情になってしまうのか。
「とはいえ、そんな呪縛から彼
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