第二話 託す者、託される者
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ム王朝の滅亡を悲しむより新たな帝国の誕生を望んだか……。皇帝はまたバラを見ている。楽しそうにバラを見ているが本当に見ているのはバラなのか? 美しく、そして棘の有るバラ。まるで誰かのようではないか。
「あれはゴールデンバウム王朝を滅ぼすであろう、しかし銀河帝国はあれの元で新しく生まれ変わるに違いない……。それからはあれが予に近づいてくるのが楽しみであった。ゴールデンバウム王朝が滅びるのは寂しいがそれも宿命ならばやむを得まい、せいぜい華麗に滅びればよい、そう思っておったのじゃ」
「……」
華麗に滅びるか……。たしかにゴールデンバウム王朝からローエングラム王朝への交替は華麗といって良いだろう。しかし流れた血の量も少なくなかった。そしてローエングラム王朝は成立した直後から地球教、自由惑星同盟、ヤン・ウェンリー、ロイエンタールとの流血に彩られる事になる……。
「そんな時よ、そちが現れたのは。誰もが無視できぬ力を持ち始めたそちを誰が味方にするのか、それによって帝国の未来が決まるだろうと思った。まあ、ミューゼルの元へ行くのだろうと思っておったがな。まさかブラウンシュバイク公がそちを養子に迎えたいと申すとは思わなんだ」
「……」
「驚いたが妙案だとも思った。言われてはじめて気付いたわ、帝国をゴールデンバウム王朝の元に再生させることができる唯一の策だと。新しい未来よな。久しぶりに興奮したわ。あの男がこんな策を考えるとは、伊達にブラウンシュバイク公として宮中で生きてきたわけではないと思うとおかしかったの。フッフッフッ、平坦な道ではない、混乱もあろう。しかし内乱よりは流れる血の量も少ないに違いない」
「……」
勝手な事を言うな。俺はコンラート・ヴァレンシュタインの息子だ。貴族になどなるつもりは無い。
「そちに帝国を預ける」
「!」
気が付くと皇帝は俺を見ていた。静かな落ち着いた眼だ。
「いい加減な気持ちで言うのではないぞ。予の寿命は持ってあと三年であろうな。遺言と思うて聞いてくれ」
「帝国を再生できるのはミューゼルかそちであろう。ミューゼルとそちは正反対よな。ミューゼルが火なら、そちは水よ。あれは全てを焼き尽くして新たな帝国を作るに違いない。犠牲は多かろう……。そちは違う、不要なものだけ洗い流して帝国を作り直すに違いない。時間はかかろうが犠牲は少なかろう。予はそちを選ぶ、皆がそちを選んだようにな」
「皆ですか?」
「そうだ。国務尚書、帝国軍三長官、ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯、今はわからなくともいずれ気付く」
「……」
「エルウィン・ヨーゼフは決して聡明とは言いがたい。多くの者があれを皇帝にしたことを後悔するだろう。そうなれば、人々の人望はそちに集まる。そちとエリザベートが帝国を動かしてゆく事になるのだ。帝国を頼
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