23舞VS香里
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夜の使い魔」を出したのも妖狐の力に繋がるらしい。
「…その力でお母さんを助けたり、テレビにも出て色んな人を助けた。でも力が足りなくなると倒れる、もう無理だって言っても許してくれなかった。病気がひどい人に当たると、私の方が死にそうになった」
ここ数日の感触で、香里に触れられると力を吸われ、キスやそれ以上だと、さらに力を奪われるのを知ったので、舞の言葉と自分の経験が重なった。
「そうだな、俺は香里と栞だけだったけど、何かこう、生きる力とか、根こそぎ持って行かれる感じがするよな」
「…そう、最初はお母さんも気付いてくれなくて、「お金がもらえる」とか「人助けだから」って言われて励まされたけど、もうできなかった。そうしたら助からなかった子の家族が、「詐欺師」「うそつき」「あいつらだけ助けて、うちの子は助けなかった、差別だ、鬼っ」「子供の命を返せ、この化物っ」「うちの子はお前に殺された、悪魔めっ」「お前も死ね、怪物がっ」って、何度も脅かされて、追い回されたっ」
いつもより饒舌で、泣き出した舞を抱きしめ、頭を撫でてやって慰める。
「お前は悪く無い、悪いのはそんな奴らだ、もういい、もう終わったんだ」
「…ううっ」
舞に涙が戻ったが、祐一の中にいる右腕も震えていた。どうやら右腕が舞から追い出された喜怒哀楽のうち、哀しみの感情を持っていたらしく、間近にいる舞本体に影響を与えていた。
「舞のお母さんは助けられたんだろ? それだけでも良かったじゃないか」
「…うん、良かった」
抱き締めていると少し落ち着いたのか、泣き声が止まり、祐一の左手を取る舞。
「…さっきも香里さんが言ってたから少し思いだした。私が主人格、こいつらは私が追い出した、悪魔で鬼で化物で怪物で魔物、「嫉妬」と「怒り」と「恨み」と「憎しみ」と「恐怖」。だから殺さないといけない」
「やめろっ、こいつらを殺すと、お前の手足や胴体も腐り落ちるっ、最後にはお前が死んでしまうっ、だめだっ」
その魔物たちを自分の中に宿し、役目も知った祐一は、香里が持っていた左手が怒りに震え、栞が持っていた右手が哀しみ恨んでいるのが聞こえた。そしてそれらを倒した時、舞は感情の全てと生きるのに必要な力も失い、手足を一本づつ無くし、最後に残った胴体を殺した時にすべてが失われるのが分かった。
「怒りや哀しみは生きて行くのに必要な力だ、欲が無かったら食欲も無いし、恐怖が無かったら素手でライオンにでも向かって行く。お前は今まで、刀一本でライオンより怖い魔物に向かって行ってた、怖さが無かったんだな?」
「…え? そんなの無かった」
気の毒な相手を見て祐一も涙を流す、今まで自分を傷付け、自殺するために全力を傾けてきた少女。その顎を持ち上げ、もう一度許可を取ってみる。
「今からお前の一部を返していいな、もう許してやれ
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