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KANON 終わらない悪夢
23舞VS香里
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しムッとしたが、舞から見ても、魔物を抱いて可愛がっている人間を見るのは、信じられない光景だった。
「さあ? ここ何日か一緒だったし、なっ」
 心は魔物とは言え、男女の関係になった上、香里に何かが憑依していたとしても、もう驚くような事態では無かった。
「でも、俺を「好き」なんて言ったの、香里じゃなかったんだな、嘘だったのか?」
 諦めたような、しかしサバサバした表情で、香里の両肩を押して、距離を取ろうとする。
「違うっ、何でそんな事言うのっ? あたし、祐一がいないと死んじゃうのにっ」
 先程の魔物の表情から、またか弱い表情に戻り、祐一の胸の中に戻ろうとする香里。
「じゃあ、今はどっちなんだ? 香里か? それとも舞が追いかけてた奴か?」
「分からない、さっきは確かにあたしじゃなかった。でもっ、祐一が好きなのはどっちも同じよっ」
 目の前で、自分の左手が祐一に告白する光景を見せられ、奇妙な気分になって顔が赤くなる舞。そこで「…今からでも口封じ」と思ったかどうかは定かではない。

「何か難しいな、冷えるだろ? 中に入ろうか」
「うん…」
 激しく争って汗はかいたが、風に晒されて体が冷えて来た二人。香里も、正体が分かっても優しくして、体を気遣ってくれる祐一に腕を絡め、人が少なすぎるロビーに戻った。
「舞もほら、牛丼」
「…分かった」
 祐一が間に入った途端、奇妙な停戦が起こった。今まで言葉も交わさず10年戦って来た相手が、今は祐一に体を預け、腕を離そうともしない。
(…こいつが私の左手? それに栞と言う子が右手、分からない? でも祐一が好きだって言った)
 天使の人形や、祐一に聞かされた話から、次第に状況が分かって来た舞。その表情は、自分の気持ちにも気付かされたのか、少し赤らんでいた。
 しかし、自分から追い出した5体の魔物のうち、何体かは街中で人間狩りをしている。 例え死者は無くても、抜け殻のようになった者達は、明らかに生命力を吸い取られていた。そしてその魔物達を狩るのは、自分の使命だと舞は思った。

 病院のロビーで、アイスクリームを口にしながら香里が口を開いた。舞も木刀を鞄に収め、牛丼に専念している。
「ねえ祐一、昔、一緒に遊んだの覚えてる?」
 魔物と呼ばれた舞の分身達は、天使の人形と同じく、当時の記憶を鮮明に覚えていた。まるで固着したように、その瞬間に釘で固定されたままであるかのように。
「いいや、でもそれ、どっちの話だ? 香里か? それとも」
 今は香里なのか魔物か、どちらと会話しているのか分からない祐一。舞もまだ、力の抜けきった祐一が、あの麦畑で遊んだ少年とは思っていない。
「あたしにもわからない。記憶が入り混じって、何がどうだったか、祐一の名前も知らなかった。でも、あんな楽しかったの生まれて初めて。あ
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