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KANON 終わらない悪夢
23舞VS香里
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か叩いても、すぐ再生するわ、さあ、かかって来なさいっ」
(…こいつ、いつもより早いけど、弱い)
 重心が高く、体重も軽い香里の体では、いつものように押し潰すほどの力は発揮できなかったらしい。
(…その子を人質に取っている余裕か? それとも器が小さすぎて力が出せないのか?)
 香里が即死する力では切りかかれず、隙があっても急所を刺せず、攻めあぐむ舞。
「ほら、見えるでしょ? 急所はここよ、もっと強く刺してみたらどう?」
 心臓を指差して舞を挑発する香里、それは姿も声も香里でも、魔物その物だった。 
「祐一に見せてやりたいわね、クラスメイトを斬り殺すあんたの姿を、佐祐理って人もどう思うかしら?」
「うるさいっ!」
 頭蓋骨を砕くほどの打ち込みをしたが、寸前まで香里はかわそうともしなかったので、慌てて剣の流れをそらして鎖骨を叩く舞。
「甘いわね」
「うあっ」
 胸に一撃を食らって吹き飛ばされる舞だが、いつものように、肋骨をへし折られるような重い衝撃は無かった。
「ゴホッ、ゴホッ」
(…やっぱり弱い、でも、こいつは殺せない、どうすればいい?)
「あはははっ! どうしたの? らしくないわね。そう、あたしは殺したら死体が残るものね、警察や祐一は騙せない、どうするのっ!」
 立て続けに腕を振るわれるが、かわすか打ち下ろす以外、有効な手段は無かった。
(…祐一、どうすればいい? 私はこの魔物をどうすればいいの)
 ここに来るまでは、香里を殺す覚悟すら出来ていたが、祐一の顔を見て、声を聞いてしまってからは、その意思は萎えていた。
(これで左手はズタズタ、祐一が帰って来たら、この手を見せて抱き付けばいい。「この女に殺されかけた」って、これでこいつは終わりよ)
 意思の大半を魔物に支配されながらも、祐一に近付く女を潰す事は忘れていなかった香里。それが今の状態を拒めない理由でもあり、甘んじて受け入れるエサでもあった。

(…こいつは左手しか使わない。魔物は左手にいる)
 そう気付くと、再び間合いを詰め、細く長い手の攻撃をくぐり、香里本体へと接近する舞。もちろんこれを「弱い」と言えるのは舞だけで、常人ならかわす事すら敵わず、栞の右手に潰された不良達のような末路を歩むのが普通だった。
(…左手の1本、へし折っても死にはしない。それにここは病院、やってみるか)
 芝生の上を体勢を低くした舞が疾走する。香里の方も、視線と殺気が入れ替わったのに気付き、左手が狙われているのが分かった。
「やれるもんならやって見なさいっ!」
 まず舞の足元を、刺のついた鞭のような腕が薙ぐ。
「はっ!」
 一撃をかわし、低く遠くへ飛ぶ舞。香里はそこに返した手を捻り、後ろから腕を叩き込んだ。
「…甘いっ」
 その攻撃も、まるで後ろに目が付いているかのよう
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