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KANON 終わらない悪夢
21最後の授業参観
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、命の危険からすれば何の価値も無いハリボテなの」
 主題の「命」を絡ませた脚本と芝居をして、格の違いを見せ付けてやることにした香里は、準備してきた「手首のためらい傷」が周りに見えてカメラにも映るよう調整してから、昼休みに公表していた、「二人の時間を繋ぐ運命の腕時計」を引き出した。
「香里っ、その手首の傷っ!」
 予定通り、傷に気が付いて、必要なセリフまで言ってくれた女生徒に感謝しながらも、見られたことに驚いた表情をして、顔を背けて手首を隠す。
「ち、違うの、これはっ」
「香里っ、傷って何だっ?」
 脚本に乗ってくれた父親まで必要なセリフを言ってくれて、ほくそ笑む香里。
「ええ、そうよ、自分で終わりにしようとしたの。あたしが妹から貰った時間は「たった一晩」、でも、でも幸せだった。伸ばしてた髪も、病院では邪魔になるだけだから、祐一に切って貰って「遺髪」として受け取って貰えた。きっと妹か名雪なら、見付けても捨てないでいてくれるだろうと思って」
「香里っ」
 計ったように感動した名雪が涙声で合いの手を入れてくれて助かる香里。昼休みに話してしまった「奇跡の恋シーズン2」のダイジェストを、カメラにも収めてもらって邪悪な妹に対抗しようとした。
「でも、妹が掛けてくれた魔法が解けても、12時の鐘が鳴ってしまっても、あたしは諦められなかった。電話で妹とも喧嘩して、心配してくれてた名雪とまで絶交して、あたしはみんなを裏切り続けたっ、だから終わりにしようとしたのっ」
 手首の傷を全員に見えるよう袖と時計を上げ、「長さも長く派手な割には浅い数本の傷」を見せた。時系列でどの時点で切ったかは言っていないので、それは観客の想像に任せた。
「でも、左手には祐一と交換した腕時計があったの、結婚式の真似事までして、祐一との愛を誓い合ってしまった、妹への裏切りの印があったのっ」
 そのまま顔を両手で隠し、嘘絶句して泣き崩れる振りをする香里。
「悪い魔女はあたしよっ、祐一を誘惑して、妹を苦しめて、名雪まで…… でも、できなかった、時計が手首まで滑り降りてきて、祐一に止められた気がして、切れなかったのっ」

 その時の栞は、姉の急ごしらえ脚本の見事さと、いつ必要になるか分からないのに、手首の傷まで用意していた天性の勘の素晴らしさに、悔しさから来る涙を流していた。
「それ、さっき話してくれた、病室で結婚式をした時、相沢くんと交換したエンゲージリングの替わりでしょ?」
 説明的なセリフも、自分から言ってくれた生徒に感謝して、不足した所を補っておく。
「ええ、朝日を浴びながら病院のカーテンを体に巻いて、頭にシーツを載せて、母さんだけに見守ってもらいながら言ってしまったの、「誰からも祝福されない愛の言葉」をっ」
 再び感動のズンドコに叩き落とされた教室では、「不倫は文
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