21最後の授業参観
[8/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
逆転され、今行けば逆効果になる事を悟った。
「相沢っ、てめえ何しやがるんだっ、栞ちゃんから香里をっ」
男子数名が泣きながら祐一を責め立てる。それは羨ましさや嫉妬ではなく、香里を幸せにしようと思う余り、栞から大切な姉を奪い、自分の物にしてしまった悪い男を責める言葉であった。
「祐一さん、お願いです、お姉ちゃんを私に返して下さいっ、あのかっこ良かったお姉ちゃんをっ……」
泣いて叫んで嘘絶句して、姉が構築した世論を叩き潰し、「祐一を返せ」ではなく、全く角が立たないよう、格好良かった香里を返すよう言って、二人の関係を完全に絶とうとした栞。
ここで香里を返さないような男は、体育倉庫に連れて行かれ、マットで簀巻きにされて十人ぐらいの男子が上に乗って制裁されたり、ホモーに掘られるのは間違いない、満足した栞は嘘絶句したまま席に座った。
(しまったーーーーーーーーーーー!)
妹の実力を見誤っていた香里は、昼休みに喋って泣いて嘘芝居した労力を、全てひっくり返されて無駄にされるとは思ってもいなかった。さすがにシーズン1のヒロインだけあって、実力は自分と互角だと認識せざるを得ない。話の主題は「命」から外れているのに気付いたが、観客の方は気にせず視聴している。
そこでマヌケな男が立ち上がって栞の言う通りにしようとしたのを見て、その短い時間に脚本を書き換え、妹に勝利して、尚且つ時間内に収め、授業終了時間に優勢でなければならない。難題に立ち向かうため、香里は脳をフル回転させた。
祐一は栞の行動に恐ろしいほどの違和感を感じた。邪悪な芝居をして、香里が作ったお話を根底から覆し、自分を返すよう言うのではなく、自分の恋人をも譲った愛しい姉を、今すぐ返すよう要求されてしまった。
事情を知っている祐一は、もう恐怖しか感じていなかったが、片方の悪魔と手を切れる機会を作ってもらったので、一時、栞脚本に乗ることにした。
「すまなかったな栞、俺、お前の恋人なのに香里と本気になってしまって。でも、もう返すよ、お前の大切な姉を、格好良かった香里を。医者だって香里はよくなったって言ったらしいし、大丈夫だよな? おれも精一杯頑張ったし、香里だって幸せそうにしてくれた、だから」
「やめてっ!」
香里脚本が完成したのか、アドリブで対応しているのか、嘘芝居の悪魔が立ち上がって祐一を制止した。
「あたし…… 治ってなんかいない、祐一がいてくれなかったら、また血の気が引いて真っ白になってしまうんだからっ」
脚本が完成せず、アドリブなのか今ひとつキレが悪い香里の芝居。そこで間を繋ぐために「恋は不治の病なんだゾ」などと下らない話を挟もうとしたかどうか定かではない。
「もうあたしは栞が知ってるかっこいい姉なんかじゃない、あんなの嘘なの、外見を取り繕ってただけの仮面。そんなの
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ