21最後の授業参観
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「余命は持って三ヶ月」と聞かされた時、こうしないといけないって思ったんです、「たった一晩の奇跡の恋」を、お姉ちゃんにもプレゼントしてあげようって」
「あひぃsdfhdそghdりおpいあぴゅ!」
もう言葉にならない女子の悲鳴が教室に響き渡った。栞も、もう冷静に話せなくなったのを示すように、身内の呼び名を「姉」にせず、失言して「お姉ちゃん」と呼んでしまうほど取り乱している演出を加えた。
(まさか、この子?)
新番組の名前が「たった一晩の奇跡の恋」にされてしまった所で香里も気付いた。貸出要件が「たった一晩だけ」で、利子はトイチで取って債権回収して、自分をキッチリ型に嵌めようとしているのを。
「皆さん、私が「一週間だけ祐一さんと恋人の真似事」をした後に入院して、その間はお姉ちゃんが祐一さんを観察して、私に知らせてくれたのはご存知ですよね?」
「知っでる、ざっぎ聞いだもん」
もう泣きすぎて鼻が詰まり、濁点を正しく使えない女生徒が答えた。
「その後も、恋愛音痴のお姉ちゃんは祐一さんを見続けて、横顔をスケッチして見せてくれました。だから私が先に気付いたんです、それで、今度は私が告知してあげました、「お姉ちゃんは祐一さんが好きなんですね」って」
先程聞いた悲しい情景を、妹目線から教えられ、教室は静まり返った。
「お姉ちゃん、凄く慌ててました。だっていけない事ですよね? 「大切な妹の恋人を好きになってしまう」なんて」
「もうやめてっ、栞っ!」
まるでその時の記憶を思い出し、耐えられなくなって叫んだような演出を入れ、世論が冷静になって栞を応援し始めないように話の腰を折った。
「その時のことは祐一さんにも伝えました、だからお姉ちゃんの心配はしないでいいですから、一晩だけ恋人の真似事をして、お姉ちゃんを幸せにしてやって下さいってお願いしたんです。でも、祐一さんは悪い人でした」
祈るような格好で、笑顔のまま涙を流し続ける栞の言葉に息を飲み、再び静まり返る教室。祐一は自分が悪役にされる予感はしたが、栞の弁舌が勝てば悪魔のような香里から開放される。そこで邪魔はせず、静かに次の言葉を待った。
「お姉ちゃんだって、告白しなければ忘れられた、本気じゃないって思わせれば、次の日には今までのクールで格好良いお姉ちゃんに戻れたのにっ、でも、祐一さんは、お姉ちゃんに本気で告白させて、本気で愛し合ってしまったんですっ、私からお姉ちゃんを奪って、どこにでもいるただの女の子にしてしまったんです……」
首を振って涙の雫を飛ばし、「妹の彼氏との禁断の恋愛」であることを説明し、それよりも「憧れていた格好良い大切な姉」を壊して奪い取り、「どこにでもいるただの女」にしてしまった事を責める。
香里は実力行使をして、抱き付いてでも妹の口を塞ごうと思っていたが、最期の言葉で
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