21最後の授業参観
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「あ、ありがとう、みんな……」
(フンッ、今はこれが限度ね)
栞が来るまでの前処理が終わって、仕方なく着席する香里。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
そこで祐一にも、教室に魔闘気が近付いて来るのが分かった。
(来ちまった)
諸刃の剣である最終兵器栞、失敗すればここは「ガ*ラ対ギャ*ス」「ゴ*ラ対キ*グギドラ」のような恐ろしい戦場になる。
「栞っ!」
「お姉ちゃんっ!」
やはり栞は、父親の説明と、この場の空気だけで、瞬時に自分の役割を感じ取り、大嫌いな姉に抱き着いた。
(お前もそうなのか、栞?)
そこで無言で立ち上がり、栞に席を譲った北川。
「いえ、いいんです」
栞も一度断ったが、騒ぎを大きくしないよう、一礼して席に座った。祐一にも挨拶代わりにパンチでグーを叩き込みたかったが、人前でカメラもあったので自重した。
「ねえっ、栞さんっ、香里から話は聞いたわ、病気のお姉さんのために「相沢くんを譲ってあげた」んですってね、偉かったわね、私達今、命について話し合ってるの、良かったら貴方からも何か聞かせて」
泣いている生徒から軽く説明され、発言を要求される栞。脚本は姉の都合が良いよう書き換えられていたが、何か答えなければならない。栞はアドリブで繋ぎながら、頭の中で素早く脚本を書き上げた。
「去年の誕生日、私は姉に無理を言って余命の告知をして貰いました。「貴方は次の誕生日まで生きられない」って」
「うううっ!」
その言葉だけで数名が撃沈され、前の「奇跡の恋」の主人公から、新番組の前説に、シーズン1のあらすじを聞いていた。
「その後、姉からは徹底的に無視されました、家でも学校でも、そこにいないように無視されました」
(ふんっ、その程度であたしの評判を下げようって言うの? やってみなさい)
ドス黒い表情で妹の行動を見守る香里。この後無様に言い訳しないで済むよう、対抗の脚本は既に用意していた。
「でも、治ってから祐一さんに教えてもらえました、姉は「病気の妹なんて、最初からいなかった事にしないと耐えられなかった」んだって」
「うわああっ」
「ひいいっ」
悲鳴のような鳴き声を上げ、次々に撃沈されて行く女生徒達、栞は演技する必要も無く、当時の事を思い出しただけで、綺麗な涙がすっと流れた。
「姉にも沢山心配させたり、つらい思いをさせて来ました。私がこんなですから、姉は自分だけが幸せになろうなんて思わず、「恋愛や恋愛ドラマが凄く嫌い」な人になってしまったんです」
「香里っ、あんたって奴はっ」
「俺を断ったのって、そういう理由だったのか」
肉親から香里の恋愛嫌いの本当の理由を聞かされ、教室内で女子の絶叫が響き渡った。多少勘違いしている男子もいたが、気にせず放置した。
「ですから「お姉ちゃん」が倒れて、病院で
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