21最後の授業参観
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香里も治るから心配しないでくれ」
あまりにもエキサイトした討論を鎮めようとした祐一だったが?
「ううっ」
「うわあああっ!」
その言葉でキちゃったのか、後ろでは母親が泣き崩れるは、女子数名もオイオイ泣き出してしまい、火に油を注ぐ結果となった。
(ふっ、甘いわね、祐一)
今はもう、祐一や香里が何か言う度に、危険水位にあった涙の堤防が、次々に決壊して行く。
(ああっ、こんな時に佐祐理さんがいてくれたら、一瞬でほのぼのした雰囲気にしてくれるんだけどなあ?)
「偉いわ相沢君っ、そうよ、きっとそうよ」
「奇跡ってあるのよ、また起こるわ、信じましょう」
不正規発言が続いたが、教卓に突っ伏して泣いている委員長もそれを止められなかった。
「うっ、ぐすっ」
(いかん、委員長までマジ泣きしてるぞ、もうこうなったら)
そこで、最後の手段を提案する祐一。
選択肢
1、舞に暴れてもらう
2、佐祐理さんを召還して、この場を鎮めてもらう
3、最終兵器「彼女」を呼ぶ
4、秋子ちゃんと愛の逃避行
選択「3」
「だから、この話し合いは香里の妹にも聞いて欲しい。それと、できたら何か聞かせて欲しい、あいつが一番命の大切さを知ってると思うから」
教室では拍手が巻き起こり、賛同が得られた。
(チッ、余計な事を)
香里にとっても、自分に近い実力を持つ、栞を呼ぶのは避けたい選択だったらしい。
「私が呼んで来るわっ」
「「「「私もっ」」」」
「いや、わしが呼んで来よう、お前らは静かにしてろ」
珍しく担任が立ち上がり、父親も教室を出て行った。女子生徒が1年の教室に突然押しかけ、ギャギャー騒ぐのだけは避けたかったらしい。
(くっ、こうなったら)
栞が襲来するのは確実となったので、ついに手を上げて自ら発言する香里。
「こんな大騒ぎになってごめんなさい。みんなも知ってる通り、私の妹って祐一の恋人「だったの」」
わざわざ過去形にして、全員に再確認しておく。
「でも、あの子ったら、私が病気になったからって、祐一を「譲ってくれたの」、私が祐一を好きになったの知ってたからっ」
まるで権利譲渡が終了したかのように言って嘘泣きする香里。もちろん昼休みの間に「相沢祐一観察日誌」から、横顔のスケッチに至るまでの、姉妹の心の葛藤も、嘘で塗り固めて語られていた。
「あの子だって祐一が好き「だった」はずなのにっ、まるで何も無かったみたいにっ」
また嘘絶句しながら、しつこく、しつこく、過去形でまとめておく。
「いいの、いいのよっ香里っ、妹さんだって分かってるわっ」
「そうよっ、私だってそうなったら、同じようにするもんっ」
また脚本が進化したらしく、現実にはそうするはずも無い生徒にまで賛同が得られ、香里の支持率は70%を超えた。
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