21最後の授業参観
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する香里。
「「「「「えっ?」」」」」
さっきまで笑っていたはずの香里は、(カメラに)振り返ったとたん、涙でボロボロの表情になり、教室は一瞬で静まり返った。
「やっぱりできないっ、このまま笑ってお別れなんてできないっ!」
まるで、「今まで気丈に振舞って来たのに、別れ際に我慢できなくなった」ような雰囲気を出して、叫び出す香里。
(なるほど、そう来たか)
「私、もっとみんなと一緒にいたいっ、もっと「青春」したかったっ、祐一やみんなとだって一杯遊びたかったっ」
「美坂……」
いつも気丈でキツイ女だった香里が、周囲の目も気にせずボロ泣きする姿を見せられ、さらに心を鷲づかみにされる男子一同。
「あたし、また学校来ていいかな? みんなと一緒に授業受けていいかな?」
「いいに決まってるじゃないっ」
「いいんだよっ、ここはあんたの学校なんだから、あんたの教室なんだからっ」
自分のセリフと芝居だけで、名も無い脇役にも名演技をさせてしまう香里ちゃん。
「いいのっ? またみんなに迷惑かけるかも知れないのに、それに祐一にだって」
まるで次のセリフを催促するように、視線を祐一にロックオンする。
(来た…)
選択肢
1、了承
2、栞に決めさせる
3、両親に決めて貰う
4、香里の体を心配して断る
「いいんだよ、誰も迷惑だなんて思ってないだろ」
(ううっ、俺も偽善者だっ)
そう思いもしないのに、何故か口からは了承の言葉しか出ない祐一君。ここで断るような奴は、人間として男子の大半から制裁を加えられ、屋上で立ち技のk-1ごっこから、寝技のグレイシー柔術を極められ、腕ひしぎ十字固やアキレス腱固めを同時に食らわされたり、アルティメット格闘技の末スペシャルビーフケーキをご馳走になり、ジャイアントスイングでフェンス超えの投擲を決められ、フリーダイビングさせられるらしい。
「栞、どう思う?」
最後の希望を託し、毅然とした態度を要求する祐一。
「はい、お姉ちゃんの思った通りに」
こちらも、そんな考えなど、これっぽっちも無いのに、笑顔で答える栞。
(お前も偽善者だ……)
それを聞いた祐一は、急速に恋心が冷めて行くような気がした。
「じゃあ、ご両親は?」
すでに言葉も無く、深々と頭を下げる二人、ついに退路を断たれた感じがしたが、最後の突撃を試みる。
「でも、やっぱり俺にはできないっ、お前が苦しむだけだからっ、1分1秒でも長く生きて欲しいからっ、「学校に来てもいい」なんて言えないっ」
香里の邪眼に捕えられないように顔を背け、まるで「お前と会いたいけど会えないっ」みたいな演技をしてみた祐一。
(ニヤリ)
目を逸らしていた祐一には、香里の口元がハンカチの下で笑っているのに気付かなかった。
「相沢……」
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