暁 〜小説投稿サイト〜
KANON 終わらない悪夢
21最後の授業参観
[14/16]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
する香里。
「「「「「えっ?」」」」」
 さっきまで笑っていたはずの香里は、(カメラに)振り返ったとたん、涙でボロボロの表情になり、教室は一瞬で静まり返った。
「やっぱりできないっ、このまま笑ってお別れなんてできないっ!」
 まるで、「今まで気丈に振舞って来たのに、別れ際に我慢できなくなった」ような雰囲気を出して、叫び出す香里。
(なるほど、そう来たか)
「私、もっとみんなと一緒にいたいっ、もっと「青春」したかったっ、祐一やみんなとだって一杯遊びたかったっ」
「美坂……」
 いつも気丈でキツイ女だった香里が、周囲の目も気にせずボロ泣きする姿を見せられ、さらに心を鷲づかみにされる男子一同。
「あたし、また学校来ていいかな? みんなと一緒に授業受けていいかな?」
「いいに決まってるじゃないっ」
「いいんだよっ、ここはあんたの学校なんだから、あんたの教室なんだからっ」
 自分のセリフと芝居だけで、名も無い脇役にも名演技をさせてしまう香里ちゃん。
「いいのっ? またみんなに迷惑かけるかも知れないのに、それに祐一にだって」
 まるで次のセリフを催促するように、視線を祐一にロックオンする。
(来た…)

 選択肢
 1、了承
 2、栞に決めさせる
 3、両親に決めて貰う
 4、香里の体を心配して断る

「いいんだよ、誰も迷惑だなんて思ってないだろ」
(ううっ、俺も偽善者だっ)
 そう思いもしないのに、何故か口からは了承の言葉しか出ない祐一君。ここで断るような奴は、人間として男子の大半から制裁を加えられ、屋上で立ち技のk-1ごっこから、寝技のグレイシー柔術を極められ、腕ひしぎ十字固やアキレス腱固めを同時に食らわされたり、アルティメット格闘技の末スペシャルビーフケーキをご馳走になり、ジャイアントスイングでフェンス超えの投擲を決められ、フリーダイビングさせられるらしい。
「栞、どう思う?」
 最後の希望を託し、毅然とした態度を要求する祐一。
「はい、お姉ちゃんの思った通りに」
 こちらも、そんな考えなど、これっぽっちも無いのに、笑顔で答える栞。
(お前も偽善者だ……)
 それを聞いた祐一は、急速に恋心が冷めて行くような気がした。
「じゃあ、ご両親は?」
 すでに言葉も無く、深々と頭を下げる二人、ついに退路を断たれた感じがしたが、最後の突撃を試みる。
「でも、やっぱり俺にはできないっ、お前が苦しむだけだからっ、1分1秒でも長く生きて欲しいからっ、「学校に来てもいい」なんて言えないっ」
 香里の邪眼に捕えられないように顔を背け、まるで「お前と会いたいけど会えないっ」みたいな演技をしてみた祐一。
(ニヤリ)
 目を逸らしていた祐一には、香里の口元がハンカチの下で笑っているのに気付かなかった。
「相沢……」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ