21最後の授業参観
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なるぞっ、やり切ろうぜっ」
「「「「「「おおーーっ!」」」」」」
全員の賛同が得られた所で授業終了の鐘が鳴った。これを予想していた祐一と栞も、恐怖よりも完全にしてやられた敗北感に満たされ、時間配分まで計算し尽くした香里に敬意さえ抱いていた。
「さあ、時間だからここまでだ、後の事はまた改めて決めろ。美坂、外出時間も過ぎてるだろ? 病院へ帰れ」
「はい」
担任に急かされ、席を立つ香里、そこで最後を締め括るよう、出口に向かいながら別れの挨拶をした。
「みんなっ、今日はありがとう、授業まで潰して話し合ってくれて。でも、この教室の中では、きっとあたしが一番幸せよ。だから「あたしがいなくなっても」悲しまないで、だって、皆にもこんなに良くしてもらったし、祐一とも出合って愛し合えた。あたしはこれから残された時間で、みんなの一生分を生きるの、後悔なんかしたりしないわ」
「ぐおうっ」
今度は父親が撃沈されたらしく、おっさん泣きを披露していた。
「父さん?」
「大丈夫だ」
後ろに行って父親を起こす香里、セリフも行動も、全て公*放送の範囲に収まるよう、自分で制限しているらしい。
「ありがとう、名雪」
「香里っ」
涙だけでなく、鼻水まで垂らした見苦しい名雪を抱き、「最後のお別れ」をする。
(だめよ、この子にしっかり抱き締められたら、心が癒されるから)
教室を出るまでは、しっぽを出さないよう頑張る香里。
「お姉ちゃんっ」
「栞……」
この二人は芝居の上だけの愛情を。周囲にばれないよう、膝蹴りとか「目に指入れ」なんかはしないらしい。
「北川君、ありがとう」
握手しようとして、まるで今気付いたように、包帯で巻かれた手を取る。
「ばかね、あたしのせいでしょ? こんなにして」
「違う、これはちょっと喧嘩しただけだっ」
「生きたくても生きられない人だっているんだから、これからはあたしだと思って大切にして」
そう言って、痛めた右手を優しく撫でる香里、北川の見え透いた言い訳すらシナリオの範疇だったが、その手の名前が「香里ちゃん」になって、毎夜酷使される所までは想像していなかったらしい。
「くっ、ううっ」
「もう、泣かないでよ、男の子でしょ、笑ってお別れしましょうって約束したじゃない」
「できねえよっ」
ゆっくりと手を離し、香里は声に出さず口だけ動かして「さよなら」と言った。
「祐一」
「ああ」
両手で握手して、何故か祐一とは一番素っ気無い挨拶を交わす。テレビで放送できるよう、キスなんかはしないらしい。
「みんな、ありがとうっ、今日の事、絶対忘れないからっ」
すでに教室は感動のるつぼに叩き込まれ、香里は全員の拍手で送り出されようとしていた。
「だめ……」
しかし、出入り口で立ち止まり、何か言おうと
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