暁 〜小説投稿サイト〜
KANON 終わらない悪夢
21最後の授業参観
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にして、三年生だけで「サプライズパーティー」として、あたしに結婚式をプレゼントしてくれるのね、あはははっ!)
 一文字にも満たない情報から、全てを察して次の一手を考える香里。幸い数人に囲まれている栞からは死角になっていて、委員長の行動は見えていない。
「いいの、もうやめて、これ以上妹を裏切れないっ」
 姉の意外な言葉に驚く栞。きっと勝利宣言のように結婚式を承諾し、取材班にも録画させると思っていたので、その言葉には違和感を感じた。
「どうして? 相沢くんだって愛を誓ったんでしょ?」
「あたしが言わせたのっ、あんな状況で断れる人なんかいないわっ、もう祐一を許してあげてっ」
 ここで香里は、再び一人歩きし始めた脚本に任せ、自分の口からは答えを出さなかった。
(フフン、今度もチェックメイトよ、祐一)
 再び「ナイト」である背の高い女子が詰め寄って祐一の肩を掴み、チェックを宣言した。
「相沢、知ってるか? こんな時の嘘はいくらだって許されるんだ、「残り三ヶ月」「死が二人を分かつ時まで」「奇跡の恋」の続き、私達にも応援させてくれよっ」
 まるで「もう分かってる」「無理すんな」とでも言いたげに、熱い涙を流しながら頷いて肩を叩き、「頑張るんだぞ」と思いを込めたパンチを軽く胸に入れられる。そして祐一と香里の手を取って引き合わせ、こう言った。
「私が牧師役をやるっ、香里のドレスを作ってくれるのは誰だっ?」
 数名の女子が嗚咽を堪えながら挙手した。どうやら統率力やカリスマ性、発する言葉の説得力でこの「王子」に敵う者はいないらしく、その言葉は全て決定事項になって行った。
「じゃあ、教室の飾り付けとか、音楽の準備は?」
 男子や女子も手を上げ、不倫否定派も完全に黙りこんだ。
「委員長、教室とか「体育館」の使用許可っているのかな? 頼めるか?」
 ハンカチで目を覆いながら、何度も頷く委員長。
「決まりだな、相沢。栞ちゃんも許してくれるかい?」
 もしここで断るようなカップルは、誰かが「不純異性交遊」の証拠を集めて、普通は問題にならない生徒同士の恋愛も、PTAや女性教師から徹底的に糾弾され退学、地元の有力者にも回状が回って就職や転校も不可能、残る人生は南の果てまで逃げて、夜のお店で働くか、パチンコや新聞配達の住み込みの仕事でも探すしか無い。そこで二人が言えたのはこれだけだった。
「ああ……」
「分かりました……」
 完全敗北した栞は、この屈辱を忘れないよう、奥歯で舌を噛んで、血が出るまで噛み締めた。寝る時も硬い薪に伏し、苦い肝を舐め、姉に勝利するその日まで「臥薪嘗胆」するのを心に誓った。
 その時、両親の横に立っていた北川が「呪いのビスクドール」のような表情をしていたのに香里も栞も気付いたが、演出上関係無かったので放置した。
「これから忙しく
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