21最後の授業参観
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いた群衆が一斉に祐一を見た。そして最初の一人が祐一の所へ駆け寄って来た。
「香里から「全部」聞いたわ、大変だったわねっ、でも、でもっ、香里を幸せにしてあげてね〜〜」
祐一の手を取って、大泣きする女子生徒。
(やられた……)
祐一や栞が昼食?を済ませている間に勝敗は決した。単身敵地に乗り込み、弁舌一つでクラス全員を味方に付けた、香里の戦略勝ちと言えた。
(栞って世間体は気にするから、多分この筋書きに乗って来るな)
表現に違いはあったが、元々そのつもりで祐一をレンタルした栞。実の姉とも壮絶な泥仕合をして学校全体での評判が落ちるより、一時姉の脚本通りの芝居をするしか無いように思われた。
「さあっ、香里が待ってるわ」
「早くっ」
ハンカチを持って泣いている女子数名に取り囲まれ、両腕を引っ張られて、香里の前まで連行されて行く祐一。
(いや〜〜〜っ!)
予想のように、男子数名に引きずられて行き、体育館裏あたりでボコられるよりはマシだったかも知れないが、数日で消える体の痛みと、永久に残る戸籍上の問題では比べ物にならない。
「祐一っ、名雪」
まるで今見付けたように驚く香里。当然、祐一達の昼間の行動を予測して、タイムスケジュール通り通路を迂回し、無事教室に侵入すると、また不健康そうな顔をして泣いたのは目に見えていた。
「ごめんなさい、来るつもりじゃなかったの…… でも、今日は貴方に会えないで、そのまま死んじゃうんじゃないかって思ったら、怖くなって、くっ」
「いいのよ香里っ、「相沢君だって会いたかった」はずよっ」
すでにドラマの筋書きが一人歩きを始めたらしく、祐一の行動にまで制限が加えられた。
(早速かいっ)
「香里……」
後ろでは、「脇役」の名雪が、絶交「された」親友を目にして驚いていた。
「名雪っ、聞いたわよ、偉かったわね、でも無理しなくていいのよ、香里と仲直りしてっ」
「えっ?」
ほえほえな名雪には、何が起こっているのか理解できなかったが、クラスメイトに導かれるまま、香里の前に連れて行かれる。
「ごめんなさい、あの時は気が動転してて、うっ、貴方にきつい事言っちゃったわね、ごめ……(嘘絶句)」
「香里っ」
そこで名雪は、香里の芝居に簡単に騙され、泣きながらその手を取ってしまった。
「いいの? 名雪?」
「うんっ、こんなときだから、しかたないよっ」
「名雪っ」
自分を許した親友の胸に飛び込み、嘘泣きを続ける香里。そして周囲の生徒も、「ハンカチをご用意下さい」の田舎芝居に騙され、貰い泣きしていた。
(うっ、やっぱりこの子に抱き締められると、心が癒されちゃう、だめよっ、今は癒されてる場合じゃないでしょ)
名雪パワーに負けないよう、自分の舌を噛み締めて耐えている香里。昔からこうされると、ほのぼの
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