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KANON 終わらない悪夢
19栞VS舞
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は、使い魔を宿したままの栞と、祐一のやり取りを見守った。

「すみません、私のせいですよね、こんなになってしまって」
 魔物に心を売り渡して以降の記憶も持っている栞は、祐一の掌の傷をさすり、悲しそうにした。
「相沢、油断するんじゃない。そいつは人間の真似をしてるだけ、もう使い魔に心も体も奪われて、人を食ってきた化物だ、人間の形してるからって心を許したりすると、頭から齧られるぞ」
 そう言われても、外見も何も今までどおりの栞で、一月末に愛し合い、四月に再会できた恋人。忘れたり、見捨てたりはできなかった。
「さっきから皆んな、ああ言うんだ。もうお前は助ける方法がないとか、何かの化物だなんて。栞はどう思う?」
「分かりません、時々自分を見失って、お姉ちゃんと大喧嘩したり、祐一さんを引きずったりしました。あれがそうなら、私にはどうにもできません」
 まだ殺意を消さず木刀を持っている舞を止めながら、別の女も口を挟んだ。
「じゃあ、遺書でも残して自殺してくれ、今までの犠牲者はアタシらで探してどうにかしておくから。まあ、夜中に出歩いて女攫って遊ぶ奴らだ、どうなってようと気にしないでいいけどな」
「犠牲者って? 栞、何をしたんだ?」
「わかりません、でも、最近変な夢を見るんです。夜中の公園とか、色々な所で待ってる夢を」
「何を?」
 話が核心に迫り、つばを飲み込んで喉を鳴らす祐一。
「え? 待ってると男の人が何人も寄って来て、「遊ぼう」とか「一緒に行こうぜ」って誘われるんです。普段なら、そんなの怖くて逃げ出すんですけど、夢の中ではこう思ってしまうんです「美味シイ食ベ物ガキタ」って」
 他の少女達も舞も、夜の使い魔と会話してしまい、その本音を聞かされて、背筋に冷たいものが走る。
「逃げ回る人を追い掛けて、手の届かない所にいる相手でも、右手を伸ばせば届いてしまうんです。それでバキバキ言わせながら食べるとスゴクタノシイんです。でも○○ちゃんを助けるために取り上げられて、オナカイッパイにはならないんですけど、オイシカッタ、タノシカッタって目が覚めて、普段は忘れてしまって……」
 ここでも、「月宮あゆ」の名前を出すのは許されていない舞の右手。少女達も確信を抱き、救いようのない栞を哀れんだ。
「なあ、聞いただろ? もうこの子はダメだ。でも、一つだけ方法はある、この子が元に戻ってる隙に、昼間に親玉を倒すんだ。バンパイアみたいにな」
『意識が奪われていない間に、使い魔を放った主を倒せば、助かる可能性はあります。片腕が腐り落ちてしまうかも知れませんが、命だけは救えます』
「でも、どうやって探すんだ? バンパイアの親玉なんて」
『そこにいるじゃないですか、使い魔が現れたのに気付いて、真っ先に駆け付けた人が』
 回りにいる少女達の指が全部、舞を指差した
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