第三章
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初
「怖いって思ってな」
「それに気付かないとそれを克服できない」
「そういうことか」
「ああ、恐怖を克服するには恐怖を知ること」
俺は確かな笑みで言った。
「そういうことなんだよ」
「だからか。タイムも伸びたんだな」
「怖いって気持ちを克服できたから」
「それでか」
「ああ、よっくわかったよ」
こう言いながらフェットチーネとミルクを腹の中に入れていた。確かに俺は俺の中にある恐怖って感情に気付いた。俺にはないと思っていた感情に。
そしてそれがカーブを曲がる時のスピードにも影響していることがわかった。それならだった。
俺はさらに練習をして恐怖ってやつを克服しにかかった。確かに死にたくない、怪我をしたくなんかない。
それでもだった。風になる、あいつに勝つ為に俺はその恐怖と戦った。俺の中にあるその感情と向かい合った。
そうして何度もやっているうちにだ。俺のタイムは少しずつ短縮されていった。
その上で俺はレースに向かった。いよいよあいつと、風との戦いの時だ。
俺は自分の車に乗りながらだ。前を見てスタッフの面々に言った。
「行くか」
「ああ、頑張ってくれよ」
「気合入れてくれよ」
「勝ってくれよ」
「絶対に勝つさ。俺は風だからな」
風になる、だからだった。
「あいつにも勝つさ。赤いあいつにな」
「風は誰にも負けない」
「だからだな」
「風ってのはひたすら速いんだよ」
少なくとも俺はそう確信している。
「あいつを抜いても終わりじゃない」
「さらに速くなるんだな」
「もっと」
「ああ、音速だって超えてやるぜ」
本気だった。何時かは絶対にやってやるつもりだった。
俺はその音の壁さえ見てそのうえで車に乗り込んだ。そして。
レースに走る。目の前にあいつの赤い車がいた。それを見て。
「見てろよ。絶対に抜いてやるからな」
こいつも風も全部抜いてやると決めた。俺は今風に、本当に風になる為に戦いに入った。レースという戦いに。
LORD OF SPEED 完
2012・8・3
[8]前話 [9]前 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ