第九十九話 夜の温室その三
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「このこともご了承下さい」
「わかりました」
「こうして蛍を観ることもです」
このこともというのだ。
「その充実の中の一つです」
「風流もですね」
「はい」
こう僕に教えてくれた。
「これもまたよいものだと思います」
「蛍を観るだけでも」
「そうです、素晴らしいものなのです」
「花火もですね」
僕は畑中さんが好きな夏のもう一つのものいついて話した。
「あれを観ることも」
「はい、素晴らしいです」
「風流ですね」
「そうです」
それになるというのだ。
「花火もまた、秋の紅葉も冬の雪も」
「そちらもですか」
「風流であり観ることはです」
「充実の一つです」
「ですか、じゃあ僕も」
「はい、皆さん御覧になって下さい」
是非にという言葉だった。
「この蛍達もまた」
「何か真剣なお話ね」
ダオさんもここまで聞いて言った。
「蛍を観ることについてもそんなものがあるのね」
「あります、ただ」
「ただ?」
「重く考えられることはありません」
こうも話してくれた、僕に。
「軽くです」
「そう考えるといいんですね」
「そうです」
「軽くですか」
「風流は楽しむものです、そして人生も」
「楽しむものですか」
「ですから」
重く考えずにというのだ。
「軽くです」
「考えてですね」
「楽しく真剣に」
「向かい合って」
「そうされて下さい」
「そういうことですね、わかりました」
僕は畑中さんのその言葉に頷いた。
「じゃあ蛍も夏のこれからのことも」
「そして秋も冬もですね」
「そうさせてもらいます、そういえば」
ここでまた思い出した、親父のことを。
「親父もそんなことを言ってました」
「人生は楽しめとですね」
「それも全力で」
「それが止様です」
「仕事も遊びも全力ですから」
ブラックジャックとさえ呼ばれている名医ぶりと遠山の金さんみたいな遊び人ぶりもどちらもだ。もっとも金さんは実際はざっくばらんで確かに刺青は入れていたけれど時代劇みたいなことはなかったと聞いている。
「そうあるべきだって」
「義和様にも言われていましたね」
「そういうものですね」
「私は止様が正しいと思います」
「一族でそう言う人少ないですけれどね」
殆どいない、そうした人は。
「やれ遊び人だの女好きだの無頼派だの」
「その無頼もです」
「全力で、しかも真面目で」
「人の道も外しておられないので」
「いいんですね」
「はい、止様は道を守っておられます」
人のそれをというのだ。
「だからいいと思います」
「人の道ですか」
「これを守っている人はです」
「いいんですね」
「それだけで全く違います」
「そういうものですね」
「それが出来ていない人
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