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KANON 終わらない悪夢
18真琴(本物)
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つ香を叩き付け、人が近寄らないようにし、転倒させられた女は立ち上がって栞の後ろに回って針を投げた。
「ユウイチサン、ドウシテソノオンナトイルンデスカ? コッチニキテクダサイ」
 栞も、女の人数分の暗闇を自分の周囲に出現させ、戦闘態勢を整えた。針はどことも知れない世界に消えて行き、栞本体に届くことは無かった。
 その隙に、お嬢と残りの一人は、指を噛んで血を出し、空中に何かを描いて印を結び、別の呪文を唱え始めた。
『我は疾風、山野を駆け抜ける風なりっ、何人たりとて我を捕らえること能わずっ、瞬動天足の術!』
「我は大盾、風雪に耐える大木なりっ、あらゆる物を防ぎ、異界に放逐されること無しっ、地根不動の術!」
 二人は自分の両足の太腿の辺りに平手を叩き込み、素足の脛に血印を描いた。お嬢の足には風が纏わり付き、もう一人が四股を踏むと、その一歩は地面に張り付いたようになり、栞の暗闇を受け付けなかった。
「どうしたんだよっ、やめてくれっ、栞、俺が悪いんだから俺を責めてくれっ」
「ワルイノハ、アノオンナ、ソレニ、ワタシノコドモヲ、コロソウトシタ」
 祐一は昼休みに開幕されると思っていた「春の大決戦」が予想よりも早く開催され、それも冗談で済むような戦いでは無く、「学園超常能力バトル物」になってしまった事実を受け止められず、栞に駆け寄って肩を揺さぶり、元の栞に戻そうとした。
「相沢、そこを退けっ、誰の使い魔に憑かれたか知らないが、そこまで堕ちた人間が助かった例をアタシらは知らない、その女はもう駄目だ、殺すしか無い」
「そんな馬鹿なっ? 栞を殺す? 何で?」
『相沢くん、お願い、諦めて。その使い魔は人の命を食らうの、祓わなければ誰かが犠牲になるのよ』
 今まで人の命と破滅を喰らい、あゆの新しい体の材料として供給して来た舞の右腕。この昼間の明るい場所に出現したのが仇となって、複数の術者に取り囲まれて祓われようとしていた。
「そんなっ、ありえないっ、こんな若い子を殺すなんてっ」
 自分で命を救った、若い命を散らす事など耐えられない祐一。それもこの少女は、自分の恋人で婚約者。多少恋心が薄れたとしても、その命を奪うのに加担するなど、あってはならない事態だった。
「相沢くん、私がそこに行くまでそいつを抑えていて、私が後ろから刺すわ」
 重い一歩を繰り返しながら、武器を持って栞に近付くトイレの少女。
「デキルノカ? ヤッテミセロ」
 二つの暗闇を薄く重ねた栞は、トイレの少女に向かって投げつけた。
「危ないっ、避けろっ」
 クリリンの気円斬がナッパを切り裂く前に、ベジータが叫んだように仲間が叫んだ。首や胴体が切り離されたまま別々の世界に送られると、例え帰って来ても元には戻らない。
 このメンバーの中で、ただ一人お笑いキャラの祐一は、少女を庇って栞の間に
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