Side Story
少女怪盗と仮面の神父 39
[6/6]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
当たり前だ。
シャムロックと同じ、浅慮な過ちだとしても。
ブルーローズにはブルーローズの理由があって、南方領の経済安定を願う義賊をしていた筈なのに……あんな言い方をされた後でイオーネを殺せば、ブルーローズが抱いていた理由も願いも想いも、全部否定することになる。
ブルーローズは義賊なんかではなく。
奪いたいから奪うだけの、浅ましい盗人集団だったと。
誰かや何かを大切に想う気持ちはすべて絵空事なんだと、認めてしまう。
だけど、ハウィスがためらい続けて、万が一バーデルの軍人にこの光景を見られてしまったら。
(時期を見誤れば、最悪私が真っ先に殺される。あの忠告の本当の意味は)
『アルスエルナに不利な状況を作ろうとするなら、王子が元凶を抹殺する』
ミートリッテは人質だ。
イオーネが、ハウィス達を貶める為の。
王子が、暗殺者を確実に断罪させる為の。
バーデル軍に現場を見られなければ、王子率いる騎士達の手でどうとでも始末できる……人質。
「やめて……お願い、やめて! もう、ハウィスを追い詰めないで!」
「! 下がれ、ミートリッテ嬢! リアメルティ伯爵は君を護ろうと」
「そんなの解ってる! でも!」
腕を払い駆け出そうとしたところで、再度ベルヘンス卿に捕まえられる。
背後から両腕を押さえる形で抱き込まれ。
身をよじって暴れても、足を後ろに蹴り上げても、振り解けない。
(イオーネは被害者だけど、商人をたくさん殺した罪人だ。アルスエルナを護ろうとする王子の判断は、きっと正しい。でも……、だからってこんな、ハウィスを殊更苦しめるやり方……っ)
「ハウィ」
「確かに、私達がやってきたこと自体は薄汚い略奪者と何ら変わりないわ。ウェミアさん達、ミートリッテに対しても、償う方法なんてありはしない」
ミートリッテの声を遮り。
ハウィスの剣が、夜空で……
うっとり微笑むイオーネの頭上で光り、瞬く。
「私も、ロクな死に方はしないでしょうね」
小さく零れた呟きは。
ミートリッテからは見えないハウィスの目に、落ちない涙を感じさせた。
「……いや……」
ハウィスが壊れる。
心が、壊されてしまう。
「嫌だ……!」
柄を握るハウィスの手に力が籠る。
(こんなの嫌だ! 私はもう、誰も……誰も??)
鋭利な凶器が、イオーネの頭に狙いを定め
「「やめてぇぇええええええええ──────っ??」」
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ