Side Story
少女怪盗と仮面の神父 39
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。だって)
彼女の言葉遣いに含まれる微妙な訛りと前情報無しでパッと見た容姿は、完璧なアルスエルナ人だから。
アルスエルナとバーデルはどちらも多民族国家だが、現代のバーデル国民は八割以上が他大陸民族に由来する黒色素を外見の何処かに有している。バーデルの住民で小麦色の髪と銀色の目と白い肌の組み合わせは皆無……とまでは言えないが、遭遇率はかなり低い。波打ち際で生体の鮟鱇を釣るようなものだ。
彼女の色彩でバーデルの暗殺者を連想させるのは難しい。
他の暗殺者達も、バーデル軍と共に動いてるアルスエルナ勢が接触を妨害、制圧するだろう。
そもそも、ブルーローズの情報は手札を失くしたくない王子が国内で封殺。シャムロックの情報は、暗殺者が国境で商人達を殺していた為に国外への流出は殆どしてない。
つまり、開戦の危機はイオーネの沈黙を以て当面避けられる。
けれど……
イオーネが不敵に笑う。
お前達も所詮はただの略奪者なのだと。
私を殺して、欲しいものを手に入れ、私の正しさを認めるが良いと。
ハウィスを、ブルーローズを、シャムロックを、騎士達を、人間を、嗤う。
「駄目……」
「ミートリッテ嬢?」
ハウィスはイオーネに剣を突き出したまま、動かない。……動けない。
当たり前だ。
シャムロックと同じ浅慮な過ちだとしても、ブルーローズにはブルーローズの理由があって、南方領の経済安定を願う義賊をしていたに違いないのに。
あんな言い方をされた後でイオーネを殺せば、理由も願いも抱いてる想いも、全部否定する事になる。
ブルーローズは義賊ではなく、奪いたいから奪うだけの浅ましい盗人集団だったと。
誰かや何かを大切に想う人間の気持ちは、総て絵空事なんだと認めてしまう。
だけど、ハウィスが躊躇い続けて万が一バーデル軍にこの光景を見られてしまったら。
(……時期を見誤れば、最悪私が真っ先に殺される。あの忠告の、本当の意味は……)
『アルスエルナに不利な状況を作ろうとするなら、王子が元凶を抹殺する』
ミートリッテは人質だ。
イオーネが、ハウィス達を貶める為の。
王子が、暗殺者を確実に断罪させる為の。
バーデル軍に現場を見られなければ、王子率いる騎士達の手でどうとでも始末できる……人質。
「やめて……お願い、止めて! もう、ハウィスを追い詰めないで!」
「! 下がれ、ミートリッテ嬢! リアメルティ伯爵は君を護ろうと」
「そんなの解ってる! でも!」
腕を払い駆け出そうとした所で、再度ベルヘンス卿に捕まえられる。
背後から両腕を抑える形で抱き込まれ、身を捩って暴れても足を後ろに蹴り上げても、振り解けない。
(イオーネは被害者だけど、商人達を殺した罪人だ。アルスエルナを護ろうとする
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