Side Story
少女怪盗と仮面の神父 39
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領主は盾、騎士は剣。
施政者達はいついかなる瞬間も、略奪を図り襲いくる敵達と戦っている。
清廉潔白な政治など、まやかしだ。
人の前に、上に立つ者は、多かれ少なかれ必ず誰かの血と罵声を浴びる。
国を護る為と言えば聞こえは良いが、やってることは結局、自身にとって邪魔な者を斬り棄てる利己主義者達とまったく同じ。
笑いたいと願った幼い子供を、そんな世界に引きずり込んでおいて。
これからは、なんの気兼ねも要らない。ずっと一緒だね。
などと、能天気に喜べるわけがない。
だから、ためらっていたのだ。
ハウィスが指輪を受け取れば、ミートリッテには逃げ場がなくなる。
浮浪上がりの新たな貴族、領主の後継者という肩書きが、ミートリッテを血まみれにしてしまうから。
「ハウィス……」
「あは! それよ。貴女達の、絶望に支配されたその顔が見たかったの! 殺したくなかった? 殺させたくない?? バカも休み休み言えッ?? 生物は等しく、奪わなきゃ奪われるだけ! 殺さなきゃ殺されるだけだ! そんな当たり前の因果からも目を逸らして笑う気持ち悪い夢想家共が、したり顔で生き死にを語るな! 虫酸が走るわ!」
「…………っ!」
「認めなさいよ。貴女達は、貴女達以外から物を奪い、過去と未来を奪い、資源を、金を、命を奪いながら生きている。綺麗な言葉で一生懸命装飾して隠そうとしたって、搾取と強奪こそが人間の本質、この世に生きる全生物の本来あるべき姿だ。譲り合いだの分かち合いだので回るのは、なんの役にも立たない、その場限りのちっぽけな優越感だけ。崇高なる善意様を一方的に投げつけられた相手の迷惑も顧みず、助けてやった自分は他者より満たされ優れているんだと思いたいだけよ!」
「違……っ」
「今だってそう! 邪魔な私を殺して仔猫を手に入れる。地位を守る。他に何があるの? 国の安全? 領民の不安を払拭? 領民一人一人が侵領者を殺して安心させてくれと、殿下の立場を守ってくれと懇願したのかしら? 違うわよねえ? 貴女達はいつだって、誰の意見も求めてないんだから??」
「私達は!」
「御託はうんざり! もう良いわ。ほら、バーデル軍が到着する前に、早く殺してしまいなさいよ。私の手足共を斬り裂いたその剣で! 本能と欲望が赴くままに! でないと、貴女の大切な仔猫が殿下に殺されるわよ?」
「「??」」
母子が同時に息を呑み、腕を組んで立つエルーラン王子へ顔を向けた。
バーデル軍は、騎士の護衛付きで自国へ逃がされた子供の顔を知ってる。
現時点、暗殺者との戦場でミートリッテが死ぬのは不自然極まりない。
アルスエルナ王国に所属してる騎士は護衛も満足に務められないのかと、体面の悪さも目立ってしまう
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