Side Story
少女怪盗と仮面の神父 39
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為に素材と縫い方で工夫を凝らしてるのか、肌理細かな表面に指を滑らせると、見た目以上にさらさらで気持ち良い。
でも。
(こんな物、本当は着たくなかったよね。もう二度と誰かが傷付いたり血を流す姿なんて見たくなかった筈なのに、私がアルスエルナ王国に来たから。私の我がままが、ハウィスにこんな道を選ばせてしまった。これは私の罪。私が現実から逃げた分、押しつけてしまった罪だ)
どんな思いで袖を通したのか。
どれだけの決意を持って、再び剣を握ったのか。
護られるばかりだったミートリッテには想像も及ばない覚悟を背負って、ハウィスは今、ここに居る。
それは、ミートリッテがどうしようもなく愚かな人間だという証。
同時に、唾棄されるべきミートリッテであっても必要としているのだと、疑う余地も否定する余地もなく明確に示された、ハウィスの愛情そのもの。
だからこそ。
これからはもう、目を逸らさない。
「……ありがとう」
今度は絶対に、逃げたりしない。
「大好き」
腕に力を込めて肩を抱き直す。
ほどなくしてハウィスの頭が浮き上がり。
揺れる群青色の双眸に、娘の笑顔を映した。
「……愛してるわ」
「うん。知ってる」
「でも、信じてなかったでしょ?」
「……ごめん」
腕を解いたハウィスが自身の涙を拭い、苦笑う。
「相談とか、全然してくれなかった」
「迷惑になると思ったんだもん。ハウィスの重荷には、なりたくなかった。嫌われたらって考えると、物凄く怖かったんだよ」
「臆病者」
「いやいや。これ、普通だからね。優しくされたからって、見知らぬ他人といきなり気が置けない家族になれる密入国者なんか滅多にいないからね? 疑心暗鬼が標準装備だからね?」
「結果について、どう思われますか?」
「申し訳もございません。」
最早、土下座以外に術は無し。
後退って平伏するミートリッテに。
ハウィスは仕方ないわねぇとため息を溢し、愛し子の濡れ髪を撫でた。
「反省の意を表明中の愛娘さんは、謝罪の一環としてお母様からのお願いを叶えてくれるかしら?」
「私にできることなら、なんなりと!」
「まあ、嬉しい。だったら……目を閉じ、耳を塞いでいて」
「え?」
一瞬、意味が解らずに固まり。
問いかけようと顔を上げて、また、硬直する。
穏やかで優しい母親は、冷たい殺気を漂わせる女性騎士に戻っていた。
「ベルヘンス卿が合図を送るまでは、決して動かないで。何も聴かないで。私を見ないで」
「ハウィス……?」
立ち上がり、ベルヘンス卿にミートリッテをお願いしますと言い置いて、背を向ける。
右手が腰に帯びていた剣の柄を握り、音を立てて
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