15帰宅
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あ言うのは経験がものを言うんだね、じゃあ、また少し思い出してみようか)
『たすけてっ、たすけてっ』
森の中を走っている幼い祐一、その服や手は血にまみれ、怪我をしたあゆを助けるために、大人を呼びに行こうと走っていた。
『たすけてっ、たすけてっ』
力を失った少女を背負うのは難しかった。おぶって歩くと言うのは、相手にも最低限バランスを取ろうと思う力が残っているか、大人と子供ほどの力の差が無ければ無理な動作だった。
『はあっ、はあっ』
そこで祐一は助けを呼ぶために走ったが、あゆを一人で残して来た訳では無い。自分が一番信用できる相手が、まだ森の中であゆを抱いて、命を繋ぎながら待っている、そのためにも早く助けを呼びに行かなければならない。
『あゆちゃんっ!』
森を抜け、開けた場所に出た祐一は、ある物を目指して走った。秋子を始めとする、特定の力を持った者達を目指して。
4時間程経って目覚めた祐一は、何故か涙を流していた。誰かを失う悲しい夢だったような気がしたが、その記憶も目覚めと共に失われて行く。
(なんか、縁起の悪い夢見たな、栞に続けて香里も倒れたからかな?)
それから1階に降りて、顔を洗っていた所で電話が鳴った。
「もしもし、水瀬ですが」
『祐一……』
「香里っ?」
その声は、すでに泣いているように聞こえた。
『お願い、早く来て』
「ああ、さっき起きて顔洗った所だ、よく分かったな」
『えっ?』
「離れてても起きたのが分かるんだ、凄いな、お前って」
香里の方は、待ちきれなくなって電話しただけだが、案外何かを感じたのかも知れない。そして祐一もタイミングの良さは誉めたが、泣いている香里の声を聞いて、元気付けてやりたくなった。
「これも腕時計のおかげかな?」
『え? うん』
祐一は香里の腕時計を握り、香里も自分の腕に巻かれたままの祐一の時計に触れる。 その時は本当に二人の時が繋がっているように思えた。
「夢の中にまで出て来たくせに、もう少しゆっくり寝させろよ」
『そ、そんなのっ、祐一の夢の中まで知らないわよっ』
少し戸惑っているようにも聞こえたが、また顔を赤らめてモジモジしているのが見えるようだった。もちろんその横で、栞が鬼のような顔をして聞いていたり、友人達がヒューヒュー言っているのは気付かない愚かな祐一クンであった。
『もう日が暮れるの、早く来てっ』
まるで日が暮れると何かが起こる、とでも言いたげに祐一を急かせる香里。
「ああ、着替えたらすぐ行くからな、待ってろよ」
『うんっ』
香里の声が少し弾んだので安心して電話を切ったが、そこで……
「ゆういち」
「おっ、名雪」
居間の外に名雪がいて、ドアの前に立ち塞がるように佇んでいた。
「もう帰ってたのか、部活は?」
「今日は
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