15帰宅
[9/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「役場に倉田や天野の家の人もいるでしょうし、人の目もありますから、明日には大騒ぎですね。香里さん、これから誘拐されたりしないよう注意して下さい。それと、病院でも看護婦さんの顔を覚えて、関係ない人の薬や注射は受けないようにして下さい、私からも周りの人や病院に言っておきますね」
「どう言うことですかっ?」
驚いて父が声を上げたが、今までのことを思い出すと、考えられない話ではない。香里を亡き者にしようと天野家や資産家が手を回してもおかしくは無い。
「私の関係者にはそんなことはさせませんが、お金目当てや、待たされている先約の方が諦めきれず、嫌がらせをして来るでしょう、注意して下さい」
再び、祐一と付き合うリスクを思い知らされる美坂家の一同。母は帰ってすぐにでも実家に電話をすることにした。
「それでは今日はこのぐらいにしておきましょうか? 色々と準備もありますし、香里さんの外出時間もあるでしょうから、続きはまた後日ということで」
「はい、本日はお騒がせしました。また後日、今度は私共の家においで下さい」
「ええ、もう他人行儀な話はやめましょう、これからは家族同然ですし」
栞を見て肩に手を掛ける秋子、この時の栞はまだ幸せを感じていた。
その後、残ると言った香里や栞からも開放され、休ませてもらいシャワーを浴びていた祐一。
「痛っ」
(あっちこっち傷だらけじゃないか、しみるなあ)
香里に泣きながら引っかかれた背中、爪を立てて掴まれた腕、噛まれた鎖骨の辺り、擦りむけた(ピーーー)にお湯をかけると傷が痛んだが、この傷さえ二人の絆のような気もした。
(あいつにも傷付けちまったな)
一生治る事の無い傷、そして恋愛も男も嫌いな女が、初めて肌を合わせ、これからは誰にも許さないであろう、唯一人の相手に選ばれてしまった祐一。
(香里って、俺以外でも、恋愛できるのかな?)
昨日までとは全く変わってしまった二人の関係。自分を出さない栞とは違い、たった一晩で自分の内面の汚い部分も、何もかもさらけ出した香里とでは、絆の深さまで逆転してしまったように思えた。
(後は親も栞も一緒だから大丈夫かな?)
もう一緒にいないのが不自然に思える程、祐一の頭の中も香里で一杯だった。わがままで気が強く、怒りっぽくて嫉妬深く、そのくせ自分の前では泣き虫で弱々しい、そんな香里の事が頭から離れなかった。
(やっぱり一眠りしたら戻ろうか)
命が惜しいので、今日は休ませてもらおうと思っていたが、離れてしまうとどうも落ち着かない。やがて疲労と睡眠不足から、ベッドに入るとすぐに眠りに落ちた祐一だが、夢の中でまたあの声が聞こえた。
(やあ、昨日は大変だったね、でも昔とは大違いだ、落ち着いて名雪に救急車を呼びに行かせたり、栞ちゃんに薬を出させたりして。やっぱり、あ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ