15帰宅
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休んだんだよ」
シャワーを浴びた後、すぐ寝てしまったので、部屋にこもっていた名雪には気付かなかった。もちろん、照明を消した部屋でカーテンを閉め、膝を抱えて泣いていた事など、知る由も無い。
「そうか、悪かったな。昨日も電話する前、香里にも「喧嘩はするなよ」って、言っておいたんだけど」
「そうじゃないよっ」
目線を合わせようともしない名雪が、何を責めているかは、聞かないでも分かった。
「やっぱり昨日の朝の話、夢じゃなかったんだね」
「覚えてたのか?」
「うん、あの後、お母さんにすぐ起こされたから」
「すまん」
「いやだよっ、あやまらないでっ」
玄関までの通路に立ち、「ここからは絶対通さない」と言いたげに、道を塞ぐ名雪。
「でも、世間では従兄妹同士なんてだめだろっ」
「いいもんっ、お母さんも「了承」って言ってたもんっ」
無理にでも名雪の横を通ろうとしたが、服や腕を掴んで縋り付かれた。
「お前は元気だから、俺なんかいなくても大丈夫だろ」
「じゃあっ、わたしも病気になるっ、けがしてゆういちがほっとけないぐらい、かわいそうな女になるよっ」
「やめろっ」
限られた時間を生きている香里や栞を思い、自分から病気になると言った名雪を、思わず怒鳴りつけた。
「だって、そうでもしないと、ゆういち、わたしのそばにいてくれない」
祐一の服を掴んだまま、その場に泣き崩れてしまった幼馴染。あゆや栞と会えなくなった時も、優しく包み込んで癒してくれた従兄妹の少女。しかし、今の祐一には抱き締めてやる事はできなかった。左手に巻かれたままの、香里の女物の腕時計が何かを語っていたから。
「これから見舞いに行くから、お前も来いよ」
「ゆういち、本気で言ってるの? わたしと香里が会えるとでも思ってるのっ?」
昨日の夜、絶交したばかりの二人。もし言葉を交わすとしたら、昨日の続き、自分から思い人を奪った汚い女を、口汚く罵る事だけだった。
「じゃあ、一人で行く」
「いやだよっ」
「香里って飽きっぽいんだろ? 病気が治ったら、俺なんかどうでも良くなるさ」
「ちがうよ、ああ見えても香里って、一回決めたら絶対変わらない、特に、好きになった人は」
祐一より付き合いが長く、親友だった女の考え方は誰よりも知っている名雪。物には執着せず、いつもクールに構えていたのは、人に依存しすぎる自分を隠していただけなのかも知れない。
「じゃあ、お前を好きなのも変わらないんだろ」
「えっ?」
そう言われてみれば名雪も、嫌いになったはずの香里の事が、ずっと頭を離れない。眠っても親友を失ったのが信じられず、病気で死に別れる事など、思い浮かべるのも恐ろしかった。
「よく分からないけど、秋子さんも言ってたんだ。俺が手を握ったり、色々してたら治るんだそうだ。 栞も叔母さ
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