暁 〜小説投稿サイト〜
KANON 終わらない悪夢
15帰宅
[1/12]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 その後、香里を落ち着かせて居間で事情を聴き終えた秋子は、美坂家に連絡し、話し合いの場を持とうと提案していた。
「わたくし、水瀬名雪の母で秋子と申します、ええ、ご無沙汰しています。今、香里さんと甥の祐一がこちらにおりますので、お迎えに来て頂くついでに、お時間があれば今後のことについてお話しておきたいと思いまして、ええ、ご足労ですがおいで願えますでしょうか?」
 両家が子供の徒歩圏内なのを知っている秋子も、気軽に両親を招待した。やがて美坂家の面々が到着すると、玄関まで迎えに出た。
「この度は、栞だけではなく、香里まで助けて頂き、お世話になりました。その上、厚かましくも押しかけてしまいまして、重ね重ね、お詫び申し上げます」
 本来なら、美坂姉妹を二人共傷物にしてしまって、怒鳴り込まれたり、慰謝料の請求を受けても仕方ない状況にも関わらず、両親と栞から感謝され、手土産の品まで渡される秋子。
 ちなみに登校するか自宅にいるよう言われた栞だが、自分がいない間に姉と恋人の間に婚約が成立しないよう、断固反対してこの場まで乗り込んで来た。
「いえ、次の日曜には祐一さん共々ご挨拶に伺う所でしたので。それにしても、お嬢さんがお二人共ご病気になられるとは思ってもいませんでした、今回も祐一さんがお役に立てたようで幸いです。さあ、こんな所では何ですのでお上がり下さい」
「はあ、それでは失礼します」
 両親が上がった後で靴を揃え、帰る時のために出口に向けておく栞。触るのも嫌だったが姉の靴も揃え、自分と祐一の靴も揃えて「嫁」として相応しいと思われるように行儀の良い所を秋子に見せておく。
(ふんっ、自分の靴も揃えられないなんて、お姉ちゃんはマイナスポイントです)
「まあ、お若いのに良くできたお嬢さんですこと」
 いつものポーズでニコニコして、栞の行動も褒めてくれる秋子ちゃん。それを聞いて一同に付いて行く間に、鼻息も荒くガッツポーズをする栞だった。

 居間に着くと、既に泣き腫らした目を拭っている香里と、死刑宣告を待つばかりとなった祐一が鎮座ましましていた。当然その前には、婚姻届や委任状、診断書などが並び、栞を撃墜するための準備が整っていた。
「さあ、どうぞ」
 祐一と香里が並んで座っていたので、その対面に両親、祐一の隣に栞、下手に秋子が座った。本来ここで客人にお茶を出す役目の名雪は、既成事実を公表して乱入しないよう、手足を縛られて、猿ぐつわまでされてベッドに転がされているかどうかは定かではない。
 そこで秋子が人数分の茶碗に、急須からお茶を入れようとした所で栞が立ち上がり、さらにポイントを稼ごうとした。
「あ、私がやりますので」
「いえ、いいんですよ、お客様なんですから座っていて下さい」
 急須を奪い取りはしなかったものの、入れ終わった茶碗を取り、机越し
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ