14婚姻届
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ドは「カラカラ」「もう泡も出ません」「体力の限界っ」だった。
「それに、これ以上、秋子さんに待って貰うのも何だし、今日わざわざ休んで貰ったんだから、早く行きましょう」
「って、予約済みかいっ!」
やがて、交通機関も利用し、香里に引き摺られた祐一は、秋子の家に到着した。
「こんにちわ、香里さん」
「ごぶさたしてます、昨日はすみませんでした」
「こんな時ですから仕方ありませんよ、具合はいいんですか?」
昨日、名雪から事情を聞き出して、全て知っているはずが、いつもの表情で答える秋子。結構狸な人であった。
「はい、その事なんですけど」
「え?」
名雪を大泣きさせた相手と平然と会話する秋子、やっぱりタヌタヌだった。
「私も、妹と同じ病気でしたっ、後、3ヶ月持たないそうです。だから… 残った人生は、思い残す事が無いように生きたいんですっ」
早速「弱モード」のスイッチを入れる香里。その瞼からはオートマチックで嘘の涙が流れ落ちていた。
「じゃあ、今日話したい事って?」
「秋子さんや祐一に迷惑を掛けるかも知れません、名雪だって、妹だって祐一が好きなのに、すいません、すいませんっ」
そう言いながら、秋子に縋り付いて泣き始める香里。
(なるほど、そう来たか)
まるでグゥに陥れられたハレのように、すでに達観している祐一。
「うっ、うわあ〜〜〜!!」
(騙されちゃ駄目です、これはこいつの演技なんですよっ!)
しかし話している内容も、病気の事も嘘ではなかった、香里からすれば「単に表現の違い」があるに過ぎないらしい。
「香里さん……」
優しく香里を抱き止める秋子の横に、さり気なく落ちる「診断書」と「婚姻届」、それに軽く目を通して祐一を見上げると。
「祐一さん」
「はい?」
「香里さんを「幸せに」してあげて下さいね」
「…はい」
もう祐一クンに、味方チームはいなかった。
「だめだよっ、ボクこんなお願いしてないのにっ!」
(もう少しがまんして、これであの姉妹は脱落だよ)
「え? どうして」
(このまま3人仲良く、なんて無理だよ。仲良く殺しあって、一緒に天国でも地獄でも、好きな所に行けば良い)
「だめだよっ!」
天使の人形にしても、香里の思うままにさせておくつもりは無いらしいが、香里のターンはまだまだ続いた。
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