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KANON 終わらない悪夢
14婚姻届
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、わざと大きな声を出す。
「あの、「婚姻届」下さいっ!」
「ぐはあっ!」
 つうこんのいちげき、祐一は256ポイントのダメージを受けた。
(こいつ、最初からこれをやるつもりだったな)
『まあ、まだ学生さんなのにねえ』
『最近の若い人は』
 それを聞いた職員や、周りの雰囲気が和らいで、二人を暖かい視線で包み、席について説明を受けている間も、祐一と腕を組んで嬉しそうにしている香里。
「こちらにお二人の名前を記入して頂いて、この下が」
 すでに家には、妻の蘭に「美坂栞」と書いた全く同じ書類があり、保護者の署名まで貰って、後は日曜に秋子の署名と印鑑を貰う所まで準備した事など、銀河の彼方に葬り去っていた。
 カリカリカリ
「美、坂、香、里っと」
(…書いてる)
 ここで、いかに鈍い祐一とて、次に何を要求されるか分かってしまった。
「書いて」
「えっ?」
「ほら、ここにぃ、あなたの名前ぇ〜」
 もう香里の手口を理解し始めた祐一は、ここで断ったり、帰ってから書くと言えば、弱モードの香里が発動して、役所の窓口で泣き出し、「昨日あれだけ愛し合ったのにっ」とか「お腹の赤ちゃんはどうするのっ?」と言い出すのは簡単に想像できた。
「あっ、ああ」
(大丈夫だ、判子は持ってないし、親の署名も無い、そうだ、俺はまだ17じゃないか)
 震える手で自分の名前を記入して行く祐一。何となく13段階段を登って行くような予感がしていた。
(いや、本当に大丈夫なのか? 相手は香里だぞ)
 嫌な予感がしながらも、最後の「一」を書き終わった所で、香里が口を開いた。
「あの、事前の提出って、できるんでしょうか?」
「はい?」
「私達、まだ17歳なんです、でも」
 懐から病院の封筒を出す香里、すでにその瞳には、大粒の涙が盛り上がっていた。
(まっ、まさか?)
「実は私、病気で、もう永くないんです…… 持って、後3ヶ月って」
 流れる涙を拭おうともせず、震えながら泣いている(振りをする)香里。
(だっ、騙されるなー! これはこいつの演技だっ! 騙されるんじゃないっ!)
 祐一の心の声が虚しく響いたが、それは誰の心にも届かなかった。
「はっ!」
 両親からのお手紙(栞用)と、診断書を見せられた職員は、息を飲んで驚いていた。
「すっ、すぐ聞いてきますっ!」
 慌てて席を立って、奥の上司の所へ走って行く職員。 普通、誰もが目にする診断書に「余命?ヶ月」などと書いてあるはずが無いが、天使の人形の指示で加筆されたらしい。
「お前、狙ってたな、いつのまに診断書まで?」
 鬼に金棒と言うが、この場合「何とかにに刃物」が妥当かもしれない。そこで、職員のいない間に、祐一の言葉など無視して、妻と夫の欄に印鑑を押して行く香里。
「あ、相沢って、どうしてお前が
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